監督とコーチは
ホイッスルが鳴った後、無防備になったQBに背後から襲いかかる
そんなプレーの指示はしていない。
改善されるべきは、あの反則プレーにいたった指導法と、不足していたコミュニケーションだ。



(3) 「1 プレー目から QB を潰しに行け。」が試合出場の条件だったのか?
条件ではなく、コーチは最初(1プレー目)から思い切ったタックルをさせたかった。
これも、A選手とB監督及びDコーチで言い分が異なっている。しかし、A選手
が 5 月 3 日から 5 日の練習で、レギュラー選手が行うスクリメージやウォークス
ルーなどの練習から外されていたこと、試合当日のスタートメンバー表にA選手
の名は載っていなかったこと、ところが、A選手がB監督に直々に「QB 潰すんで
出してください。」と言いに行ったところ、試合に出られたこと、試合前にDコー
チがわざわざA選手のところへ行き「できませんでしたじゃ、済まされないから
な。」と念を押したこと、
「試合が終わって『何もできませんでした』じゃアカンぞ、と言った。
思い切りタックルしてほしかった。
課題として、いつもと違うプレーをしてほしかった」とコーチは会見で言った。
及び、A選手が 1 プレー目から強引に関学大 QB に突っ
こみ、まさに「潰しに」行ったこと等々を考えると、「1 プレー目から QB を潰し
に行け。」という指示は、A選手が 5 月 6 日の関学大戦に出場するための条件とさ
れていたと考えるのが、一般的な経験則等に照らして合理的である。
コーチは「それぐらいの気持ちで潰してこい(サックしてこい)と言った」。
なお、規律委員会が入手した情報の中には、試合前々日の練習終了時のハドルの
際、B監督がA選手に対して、「反則してでもいいから QB を潰してこい。責任は
おれが取る。」と言っていた(チーム皆が聞いていた)というものもある。A選手

が 5 月 22 日の記者会見でそのようには発言しなかったので、規律委員会もその事
実は認定しないが、それが真実である可能性は決して低くないと考えている。
ここは、よくわからない。
規律委員会はA選手からもヒアリングしているのだから、報告書にこのような書き方をするのなら確認すればよかったし、ヒアリングのあとに出てきたことだったとしても電話やメールで訊けなかったのだろうか?
それに、細かい言い回しだけど「反則してでもいいから」だったのか?似た言い回しで「反則になったとしてもいいから」だとフェアプレーを前提としているかどうかの意味合いが異なる。
監督とコーチが指示していないと言っているのを崩すための調査なら、ここは大事なポイントだと思う。
けれど、指示していたのだろうと思って調査していたら、このような書き方を躊躇わない程度に監督やコーチの主張は軽視されていたのかもしれない。

職能団体の協会などでもそうだが、関東学連の理事の方々には本業があって、交通費プラスアルファぐらいで理事を引き受けていることと思う。
そのなかで、このような調査はご負担だったと思う。
だからこそ、結論ありきのような、疑わしきを罰したような、異議申立ての余地のある報告書になってしまうぐらいなら、調べ切れなかった限界は認めて公平な調査結果を報告するか、延長して調査をしてほしかった。
報告書作成段階で、ふだんアメフトを観たこともないのに大騒ぎしている人のほうを向くよりも、これからの学生アメフトのためになるほうを向いてほしかった。
“経験則から”、指示の有無はわからない、または、さらなる調査が必要だと報告して、経験則のない大勢に「そんなものかもしれない」と思ってもらえるようにしてほしかった。

結果としての悪質タックルの責任については、指導側にある。
プレーの意図を伝えきれていないからだ。
コーチ自身も会見で「もっていきかたのミス」と認めている。
責任の所在と指示の有無は同じでないのだから、指示がなかったことが認められればいいと願っている。