シェイクスピア『リチャード三世』終盤の殺してきた亡霊達による「絶望して死ね!」の連呼。亡霊の数はどんどん増え混雑してゆく。チェーホフ劇は「どんなにみじめでも生きましょうよ!」と呼びかけるが、シェイクスピア劇は「絶望して死ね!」という。せっかく生きてるなら、どっちも、言われたい。

佐々木蔵之介=リチャードの面白い所は、明るくも暗くもなく、善人でも悪人でもない、ゼロの顔をしている(『シャーロック』の時の君が代を歌ってたときの表情。あれはリチャード三世)。そういうゼロの表情をたたえたひとが多くのひとを悪のもと殺し、この世に思いを絶って死ね!と言われ、死んでゆく。