川上弘美『神様』は後半に進むにつれ、執心と届かなかった言葉が大きなテーマとしてせり出してくる。心はとらわれるが、言葉がとどかない。そのあいだをつないでくれる〈神様〉もいない。自分でふっとあやまちのように、「私の神様」を見つけるしかない。であったり、であわなかったりをくりかえして。