『現代詩文庫 松下育男詩集』。松下さんの書くものは、できないこと、不可能だったことから、出発する。私たちは大人になるにつれ、できていってしまう。なんでもこなしていってしまう。でも松下さんは、もう一度、できなかったころとことから始める。うまくいえないなら、うまくいえないから、始める。

「ほんとうにせつなくなるのは/とても好きなものがそうでなくなる瞬間/そこにうすい膜がはりつめていて/それを通り抜ける瞬間なんだ/どうしてそうなるのかはわからない/わからないところを見つめて生きていけってことなんだ」『現代詩文庫 松下育男詩集』