永遠回帰の思想の核は客観的に叙述できる理論的な構成にあるのではなく、それを受け入れる主体の認識のありように、そしてなかんずく、〈力への意志〉との関連にある。ニヒリズムの極点、つまり否定の極北にあって、その現実を直視し、いっさいをあるがままに肯定することーーすなわち、いっさいの事物が、醜いものも美しいものも、弱者も強者も含めていっさいの事物が、〈力への意志〉の無限の運動のなかで幾度も幾度も無限の回数にわたって回帰するという現実をそのまま認め、肯定すること。これこそ「深淵の思想」の鍵である

    三島健一『ニーチェ』