動物はおのれの身体=肉体と一致して生きている。動物は身体そのものなのだ。それに反して、人間は身体であるとは言えない。
主体が誕生するときに身体は失われる。主体というのはそもそも存在欠如、無であるので、身体という存在にはなれない。この主体が鏡像段階を経て、自分の身体をイメージとして獲得するのだ。
したがって人間にとって身体はイマジネールな次元にあることになる。
このことはすでにフロイトにはわかっていた。フロイトは、ヒステリーを通してイメージとしての身体を知った。医者であるフロイトにはヒステリー性の身体麻痺を引き起こすような神経支配は無いことがわかっていた。それは、手とか足などについて私たちがもっているイメージにすぎないのだ。

向井雅明(ラカン入門)