滝田洋二郎『木村家の人びと』。鹿賀丈史と桃井かおりの夫婦の性行動にお金のやりとりを持ち込むことで男女の固定された役割がかく乱される。男/女でなく、払う者/払われる者として性交渉の中で上下関係が転変する。もしかしたらお金の導入は固定された価値観や役割の変化の一つのきっかけになるのかも。

よくある「表現は知人だったら無料なのか論争」のようなものも、セッ クスは親しければ無料なのかということとどこかしら似ている。親しければ無料なのかということがいつも争点になっていると思うんだけれど、『木村家の人々』はお金とタダと友愛をめぐるひとつの〈今新しい〉考え方を与えてくれる。