黒澤明はそれまでの自分を否定し抑圧するように『夢』『乱』『どですかでん』でけばけばしいカラーを用いたが、逆にいちばん黒澤明的だったのは白黒だったのではないかと『赤ひげ』を観て思う。黒いものが飛び散り、雨なのか土なのか血なのかわからない、そういう黒澤の単色のエネルギーだったもの。