『シェイプ・オブ・ウォーター』や『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ監督の描きたいものって〈幻想と痛みの接近〉なのかなあと思う。幻想はふつう痛みを遠ざける。でないと幻想が壊れてしまう。でもデルトロ映画は幻想が劇痛をもってくる。皮膚が剥がれ肉が裂け血が流れる。幻想が理由で。

こんな言い方をしていいなら、デルトロ映画は、女性主人公が幻想からいたぶられ陵辱される。まるで幻想は誰かの私有物であるかのように女性はなかなか幻想になじめず、無理に入ろうとすると肉が裂けるようなしっぺ返しをくらう。ちなみにデルトロ映画の男性たちは性的に暴力的だ。幻想と偏差。ちから。