『オリエント急行殺人事件』。アルバート・フィニー版ポワロはピクニックのような明るさで、終わりもガーラ湯沢のように雪原が輝く。デビッド・スーシェ版はマックス暗鬱で明かりも最低限まで絞られ『かまいたちの夜』のような雪の暗さ。ケネス・ブラナー版は明暗取り混ぜ少し哀しく、少し明るい

『オリエント急行殺人事件』のテーマはすごくシンプルに言えば、ひとから殴られたら・殴ってもいいんですか、になると思う。これは難しい。殴っていい、を肯定してしまうと、どんどん個人の裁量で殴りはじめるひとが出てきてしまう。でも殴られたままだったら公平や神はどこにあるのかという疑問が出る。

これはファルハディ映画でもたびたび出てくる主題で、殴られたら・殴っていいですか、がいろんな形で出てくる。問題は、殴り返したところで実は問題は片づかないところにある。痛みは返せるけれど、こころの痛みは解消できない。抱えていくしかない。それに殴った痛みも加わる。痛みは増える。へらない