フランス料理店に行ったら暖房が壊れていて、みんなでコートを着ながらスープをすすっている。なんかこう、革命の合間の休憩にスープを飲んでいるようで、いいなと思った。みんなコートを着ながら、バターをパンにつけたり、肉をフォークとナイフで切ったり、サングリアを飲んだりしていた。

そば屋さんに行ったら、ライスを飲んでるおじいさんがいて、それライスでしょとおばあさんからとめられている。私はカレーを頼んだが小麦粉がたくさん入った泣きたいような懐かしいカレーで、不健康に真っ赤な福神漬けもいい。おじいさんはまたスープみたいにライスを飲もうとして止められている

天丼を食べ終わったあとどうしてももうひとつおなじ天丼が食べたくなり、すいませんまったくおなじやつをもう一度お願いしますと言ったら、まったくおなじやつでまったくおなじふうでいいんですか、と不思議な顔でいう。まったくおなじやつでまったくおなじふうなのがきて食べる。まったくおなじ奴が。

うどん屋で「かけうどん小(しょう)、あったかいの」と言ったらなぜか山盛りの牛肉うどんが出てきて、どうしてか考えたのだが「(はっ!? そうだ!)かけうどんにしよう!!(とりあえず)高いの!」と聞こえたのではないか。それで高いの出しとけと店員さん思って牛肉うどん出してきたんではないか

    *

デパートの六階で大学の時の友達に凄く似てるひとをみかけて、その時私はもう五階にいたのだが、六階にいたひと似てたよなあと思い、もう一度六階に行ってみようかなと思い六階へのエスカレーターに乗ってるときに六階から五階にエスカレーターで降りていくそのひととすれ違い、も、もういいや、と思う

ただなんか割り切れないものがあり、似てるよなあ似てたよなあと思いながら、六階をしばらくぐるぐるする。ただ似てたとしても違うかもしれないよなあとも思いながら、六階をまわりつづける。すると似てたひとがエスカレーターで再び六階に来て、そのまま七階へ。もういいよもういいよとも、おもう。

ただなんか一回、そのひとの前を素通りしたら、あ、おまえは! みたいに刑事ドラマの犯人の〈顔あて〉みたいな感じで気づくかなあと思ったが、なんかこう、素通りをわざわざしてみる人生って、そういう人生でいいのだろうか、とも考え、素通りはしないほうしんでいきてゆくことに、そのとき、きめる。