知人が真夜中眼がさめると枕元に誰か立っているというのだが、ただ毎晩毎晩こられるとだんだんこわいというよりも、きすぎじゃないかという《気づかい》の方が先に立ってくると言っていた。
いくら幽霊でもそんなにゆく場所がないのか、毎晩毎晩おなじところに立ってあの幽霊はまるで俺じゃないか、と。

だから幽霊になってもいろんな所に立ちたいという。
誰からも気がついてもらえないかもしれないけれど、でもいろんな場所でいろんな名前を拾いたいという。
そのとき私は「クリストファー」という名前をそういういろんな場所に立つひとにつけるのはどうだろうと言った。
俺は馬場だけど、とその人が言った。