蛭子マンガでひとつ特徴的なのが〈発汗〉です。
えびすさんのマンガでは人物たちが異様に大量の〈発汗〉をしています。
これは蛭子さんが一枚絵のイラストを描くときなども、そうです。この、汗って、なんなのでしょう。
ひとついえることは、えびすマンガにおいて〈汗〉というのはひとつの世界に対するリアクションだということです。
しかも汗の量によってそのリアクションの濃度が変わるという言葉よりも雄弁な意味生成になっています。
えびすさんのマンガの世界では、汗にもレベルがあり、それはひとこまひとこま反応の濃度が変わっていくのです。
これはえびすマンガの特色とも関連しています。えびすマンガの世界では基本的にことばやコミュニケーションが意味をもちません。たとえば次の瞬間、意味もなく、殺されていたりする、そういう世界です。ことばや発話が意味をもたないのでコミュニケーションができません。でもなにかの共通の構造がないと、人物間の関係性を構造的につくれません。
その共通の地盤が〈汗〉なのではないかとおもうのです(ことばではなくて)。
だからある意味、えびすマンガにおけるキャラクターとは〈汗〉なのではないかとおもうのです。汗が発話し、コミュニケーションし、この世界を構造化しているのだと。
ちなみにサイン本です。