こないだ、
クリアファイルをどうしてわたしにプレゼントでくれないんですか、
といってきたひとがいて、
わたしが、唖然としていると、
いやたまにはクリアファイルをおみやげとかで買ってきてくれてもいいじゃないですか、というので、
いやあなたはクリアファイル欲しそうなかおしていないし、そもそも、あなたのかおはクリアファイルとは無縁そうなかおだから、
といったのだが、
いや顔とは関係なくクリアファイルがほしいですよ、贈られたいです
というので、
だったらふだんから、折にふれ、クリアファイルのはなしをしなきゃだめなんじゃないだろうか、あなたとクリアファイルのはなしなんてしたことないし、ストレートにクリアファイルのはなしじゃなくても、なにかをむだに意味もなくおおめにはさんだりしてみるとか間接的にクリアファイルをほのめかすような行動をしなければだめなんじゃないか、でないとわたしはあなたに一生涯クリアファイルを贈ることはできないんじゃないか、
とわたしはいった。そしてすぐにつけくわえるように、
だいたいあなたのデスク、クリアファイル山積みじゃんか、ともいった。
ひとはどうしてこんなにじんせいのなかで、もらったつもりもないのに、クリアファイルだけを大量にかさねていくのだろう。いきるということは、クリアファイルをあつめていくということなのか。
わたしは、深夜、ブランケットをかぶっていると、こっちをみつめているクリアファイルの視線にどきっとすることがある。きがぬけないのだ。クリアファイル。
わたしのじんせいは、クリアファイルで、びっしりだ。もうはさむものなんてなにひとつないのに、クリアファイルだけをたいりょうにかかえたまま、しんでいくようなきがする。
あの世で、神が、クリアファイルをみて、うんざりしたかおでいうのだ。どうすんの、これ、と。
わたしは、しかたなく、クリアファイルをクリアファイルする。
クリアファイルのなかのきらきらとしたクリアファイル。
神は、うなずく。

わたしは、クリスマスプレゼントが、クリアファイルだったことが、ある。
わたしは、さいしょ、おどろいて、
あれ、クリアファイルのなかに手紙をいれわすれてるみたいだけど、
といったら、
ううん、中じゃなくて、外のそれが、中身なのよ、クリアファイルそのものがあなたへのプレゼント、
といわれて、
そのままゆっくりとうしろにたおれたことが、ある。つつまれたいよ、とおもいながら。クリアなこころに。ファイルな日々を。
でも、凄く凄くクリアファイルは軽かったので、わたしはやわらかい砂漠にたおれるように、おともたてずに、たおれた。クリアファイルは、まるで、天使がわすれていった羽根みたいだ。そうじゃないかな、とわたしはいった。すばらしいクリスマスのプレゼントになるね、と。
そのクリアファイルは、いまもたいせつに、クリアファイルのなかに、はさんである。クリアファイルをクリアファイルのなかにはさんでいる。
神は、うなずく。いいね、と。そうして、すこしやさしくいいねボタンを押してくれる。わたしは、そのボタンをクリアファイルにはさむ。
はさむものはいくらだってある。これからもたくさんのクリアファイルとはさむものがわたしのめのまえにあらわれては、すぎさっていく。わたしは、あらんかぎりにりょうてをひろげて、わたしじしんがクリアファイルであるかのように、平坦なおおうなばらに、くりだすつもりだ。生(はさ)め、と。