生まれ変わったらドラキュラになって軽く、一千年ぐらい眠りこみたい。
一千年たったら、一日だけ起きて、一千年前、テーブルに置いたかつて自分の好きだった本をゆっくりと、読み返す。
一千年前、好きだったフレーズにうすく引いた色鉛筆の跡を自分の指でたどるようにゆっくりとしずかになぞったりもする。
ときに声にさえ出しながら本を読み返しつつ、世界はなにひとつ変わっていないことに、安堵する。
安心したらもう夜だったので本をふたたび同じ場所に戻し、少しく冷たい水を飲み、こんどは三千年の眠りにつく。
またしおりをはさまなかったと棺のなかで思いながらすこしだけ後悔しつつ、それでも深く落ちていくように三千年の眠りにつく。