【ほんやり】〔副詞(ト)〕

① ぼんやり、っていうには、なんだかほっこりしてんだよなあ、というさま。

② なんだかはっきりしないんだが、それが妙にいいんだよね、よしあのひとにてがみ書いてみるかね、というさま。

③ あることに心を奪われて、注意が足りなかったのだが、部下から、恋ですね、といわれてしまったアラサーロマンチック、のさま。

④ 積極的に何かをしようとする気力がないさま(できたとしても花を植えられるぐらい)。また、間が抜けていて気がきかないさま(しかし、花はきれいですね)。


【「ほんやり」ということばをふんだんに使った物語を読んでみよう】

スズキさんは、ニシダさんを、
ほんやり、殴った。
ほんやり、殴られたニシダさんは
幼少のころ、金のガチョウを読んだときにぶどう酒がめっちゃ飲みたくなったじぶんじしんを
ほんやりおもいだしながら
ほんやり、その場に、たおれた。
その夜、スズキさんはねむるまえに、一瞬、
ほんやりと電灯をけす手をとめ、
ほんやり、後悔した。
ほんやり、じぶんのむねのうえに、てのひらをのせた。
スズキさんは、あわい電灯のもと、
ほんやり、していた。
それはかつてスズキさんがいちどもかんじたことのないような
ほんやりとした、かんじだった。
そのころ、ニシダさんは
ほんやりと、愛に、ふけこんでいた。