夢のなかで階段がおりられなくなる、というひとはよくいるが、わたしはゆめじゃなくて現実にそうなることが、多々、ある。
どういうわけか、めまいがひどくなり、降りられないことが多々ある。エッシャーか、っておもう。
階段は、わたしを、とまどわせる。
階段の絵をみながら歩いてみる、というめまいが起きないような地道な練習をしたりもしたのだが、現実の階段は予想以上に厳しく、眩暈がして、うわあ、だめだ、かいだん、とおもう。
だからたとえばだれかと階段をあるいていて降りることができなくなった場合は、ここにおいていってくれ!って叫ぶ。
でも食糧はなにかおいていってくれ!たとえばランチパックとか!とも叫ぶ。
卵とツナのがすきなので、できればそれをおいていってくれ!とさけぶ。
なければ、プリングルズのロング缶でもいいから!ってさけぶ。
そうして階段をおりられないわたしは、階段のてっぺんでランチパックをたべる。みんなどうやってこの階段をおりているんだ、とおもいながら。すごいじゃないか、と。
それから、パックでエネルギーをたくわえたわたしは、階段はあきらめ、エレベーターをさがしにいく。
それか、エスカレーターにがんばって乗ろうとする。
なんどか乗ろうとし、乗り切れず、あしもとをすくわれ、やっぱやめ、それからすきだったひとのことをおもいだし、あきらめないでがんばろうとおもい、こけつまろびつつ、エスカレーターに乗る。
あとは、運ばれる。運ばれるだけだ。
かなしいかおで、はこばれていく。そういうのりものだから。
はこばれながら、わたしは、ゆめをみる。
階段を意気揚々とのぼっていくゆめだ。
うれしそうに二段飛びさえしている。
だめだ、とわたしはゆめのなかで、さけぶ。
だめだ、のぼっちゃ!
あんた、おりられないんだから!!