くらやみのなかでは
はなびらの感触だけが
わかった
はなびらがぎっしりしていたので
うえしたにくっしんするごとに
はなびらの重みで
からだがおもわぬほうこうに
ゆれた

卓上では
てがみだけが
ひかっていた
きみがじぶんにあててかいたてがみで
きみがしぬまで
ずっと循環することになっている
てがみだった

二階から
たくさんの父親がおりてきたが
ひとりだけ
ポストのなかのくらやみがこわい
といっているひとがいて
それがほんとうの
父親なんだと
わかった

てがみを投函するたびに
てがみはくらやみをとおる
だからてがみは
いちどやみのなかをとおって
ひかりかがやきながら
そのひとのもとにとどけられる

朝がきたとき
父親たちは
もう
いなかった

卓上にすこしだけ
闇だまりが
あった