【ソムニウム叢書ベスト4】
・フェンテス 『アウラ』
・エリアーデ『ホーニヒ・ベルガー博士の秘密』
・ホレーニア『白羊宮の火星』
・ベアリュ『水蜘蛛』 

とくに『アウラ』は岩波文庫とは全く違った構成の短篇集であり、ボルヘスのような言語遊戯的短篇などいつもとはひと味ちがったフエンテスがみられる。


 
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【福武文庫ベスト10(海外)】
・ガルシア=マルケス『青い犬の目 死をめぐる11の短篇』
・マーク・トウェイン『アダムとイヴの日記』
・『美しい水死人 ラテンアメリカ文学アンソロジー』
・マルセル・エイメ『クールな男』
・『チェーホフ短篇集』
・『ドストエフスキイ後期短篇集』
・ヴァレリー『テスト氏』
・アレー『悪戯の愉しみ』
・『スティーヴンソン怪奇短篇集』
・『猫は跳ぶ イギリス怪奇傑作集』

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【福武文庫ベスト5(日本)】
・江國滋選『手紙読本』
・井伏鱒二『文士の風貌 』
・『葛西善蔵随想集』
・内田百閒『旅順入城式』
・山本健吉『十二の肖像画』 

福武文庫は、中野美代子さんの中国文学ものや蓮實重彦『夏目漱石論』もとてもよかった。
夏目漱石という巨大な意味のプールにおける、《意味の快楽》のひとつの頂点がここにあるようなきがする。
その如何はともかくとして、これを読むと、ああ、文学って愉しいよね、ってすなおにおもう。わたしは、おもった。よこたわった。

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【鬱日記、または鬱だけれども生きていくための日記ベスト3】
・ウィトゲンシュタイン『哲学宗教日記』
・ロラン・バルト『喪の日記』
・吾妻ひでお『うつうつひでお日記』

だいたい、いきるのが底のほうでつらくなってくると、哲学宗教日記か喪の日記を読んでいる。
たいせつなひととおわかれしなければならなかったときなどもこれを読んでいた。
バルトの《喪》とは、たいせつなひとを喪ったという意味での《喪》のことで、死のすれすれをいきていかざるをえなくなるが、それでも《意味の喪》にふくすことで、いきていこうとするための《喪》でもある。
たいせつなひとを喪うことは、じぶんの身体が喪われる傷みとともに、じぶんの意味体系さえも喪われてしまう傷みも経験しなければならない。そう、わたしは、おもう。
つまり、世界がすっからかんになってしまうような経験である。
それでも、いきていかなければならない。
喪にふくしながら。喪失を喪失するやりかたではなく、喪失に服しながら喪失のまわりを徘徊しながら、それでもすこしずつ生のスパイラルとして浮き上がってくるかたちで。
そうやって、いきていく。