こないだのFMシアター『思い出さずに忘れずに』は、津嘉山正種と片岡礼子の豪華なダブルキャストだった。どちらもだいすきな声だが(どちらもみためもだいすきだけど)、とくに片岡礼子の声がだいすきで、学生時代となりのおんなのこが片岡礼子の声にそっくりだったので、よく、読んでほしいものをもっていって、読んでもらっていた。きょうはこれをおねがいします、といって。
将来なんになりたいの?ときいたら、看護士になりたいといっていたので、たぶん看護士は朗読がうまくなければだめだとおもうとかなんとかいって。たらしこんで。たぶらかして。わるい狐である。でも、狐はまいにち、しあわせでもあったのだ。授業は無視して、めをつぶって、となりからながれてくる声にみみをすましながら、しあわせとはこんなものだろう、とおもう。やがて、チャイムが鳴って、でも、かのじょは読み続けてる。ざわめきたった放課後のなかで、沈黙の声が、みずのうえをあるくみたいに、どこまでもはしって、いく。