サントリーのオールフリーをのむと、
ノンアルコールビールにもかかわらず、
あまりにへろへろになってしまい、ちどりあしになり、花畑にたおれふすようなきもちよさとともに・いろんなところに電話をかけてしまうため(妖精がわたしにかけろという)、
これはなんかおかしいんじゃないかと、
サントリーのお客様センターに電話をかけることにした。もしもし。祖母がでた。酔っていて、かけまちがったのである。さよなら。わたしは、いった。いまは、祖母ではなかった(妖精がそういった)。
もういちど、かけなおした。

あのね、これ、じつはノンアルコールとかいいながら、アルコールはいってるんじゃないですか?

いいえ、はいっておりません。

ほんとに?

ええ。

二枚舌?

いいえ。

うーん、じゃあ、わかりました。だれにもいいません。ここだけのはなしってことにしておきましょう。はいってますか、アルコール。

いいえ、当社のオールフリーはアルコール・ゼロでございます。

──あなた、すきなひとっていますか?

はあ。

いますか?

おりますが。

そのすきなひとにもおなじようにゼロだといえますか? このオールフリーは、アルコール・ゼロだと。

はい。

そのひとのなまえは?

それは、もうしあげられません。

はなちゃん?

もうしあげられません。

じゃあ、さいごにひとつだけ、おしえてください。どうして、わたしは、アルコールゼロなのに、こんなにも酔っているのですか?

──恋を、しているのでは、ないですか?


わたしは、でんわを、きった。
そのまま、とんびのように、ふらっと部屋を出て、夜道を、あるいた。
酔っては、いなかった。
でも、闇にもたれるようなかんじで、あるいた。闇にべたべたくっついたあしをいちいちもちあげるようにして、あるいた。じぶんのからだをかかえるようにして、あるいた。とおくからみれば、それは、だれかをだきかかえながらあるいているようにみえるようなかんじで、わたしは、やみのなかを、あるいていった。
ときどき、住宅街のあいまあいまに、わたしをのぞきこむようなかんじで桜がせまってくるのをみた。真夏の桜なんて、やっぱり酔っているんだ、と、わたしは、おもった。真夏では、なかった。