自分がお風呂に入ってるのに
家族から浴室の電灯を消されることがたびたびあって、
ああ自分のいないっぷりはすごいとおもった。
いないんだ。まったく。そこに。まあ、いない。
消灯した、真黒い、闇でしかない、とどろとどろしいバスタブの中で私はいないことになっていた。すごいなとわたしはうでをつかんだりして、これもないな。
そうしてそのいないっぷりが花萌ゆるぐらいに役立ったのは大学の試験監督のときだけだ。俺があるいてもだれもふりかえらない。ばんざい、さえ、しそうになった。ばんざあい、と。すごい。おい、おれだよ。やっぱ、みないな。ああいない。