おもいかえせば
実はぼくも、驚異体質でした、とわたしは憑依体質の彼女に話した。いまでさえ驚愕し、ぶるぶるふるえています。ほら、この手をさわってみてください。わたしはそう彼女に言ったが、彼女は手をさわらなかった。
わたしは、話を続けた。
しかしその反面、ぼくは脅威体質でもあるのです。眼をみひらいてハッピーパウダーを投げつけることで人々からあいつは脅威だとおそれられてもいます。
おそれられている!……、そう言ってわたしは、わっと泣くようにして顔をおおった。あまりにもおおくのひとがわたしの前を通り過ぎていった、と。そして、ちらっと彼女をみた。彼女は彼女で、あらぬほうをみていた。あらぬほうにはなにがあるのかなとみやると、あらぬほうには空があった。あらぬほうには雲があった。あらぬほうには光があった。うつくしかった。
わたしは、もう結果ではなく、希望を述べることにした。そして、創意体質になれたらいいなと思っています、と述べた。創意工夫ができたらいいなと。あらゆることに対し、ぼくは創意工夫します、あなたに対してさえも。彼女をみると、格別、彼女は興味がなさそうだった。あらら。
さいごに、わたしは、実は自分が、うひょい体質であることを告白した。つまらない事実だった。きょうは負けいくさだ。わたしはそう感じていたのである。だから打ち明けた。ところが彼女はそのときはじめてわたしの眼をじっとみつめた。そして、わたしの手をにぎりながら、お茶をいれてくれた。手をにぎりながらお茶をいれるなんて、いれにくかったろうに。
それから、二人でお茶を飲みながら、メープルクッキーを食べた。ときどきわらい、ときどきいっしょに歌った。そして、また、思い出したように、クッキーを食べた。それがなんだかおかしくて二人でこづきあいながら、また、わらった。しあわせな、いちにちだった。すこぶる、しあわせな、いちにちだった。