墓の話を続けて二人の人から聞いて、

いつもよりもっと墓のことを考えた。

狭い場所にひしめきあって入るのも、

あちらこちらに飛び飛びに寝るのも、

どちらもいい。


墓を嬉々として

見てまわる自分というものを、

少しばかり持て余す。

持て余すところから、

小説というものが立ち上がってくる。


      川上弘美『あるようなないような』