ときどき、話し合う。
こんなに話し合うことはないよなってぐらいに、
ずっと話し合いつづける。
ときどき、わらう。ときどき、かなしむ。ときどき、怒る。
いろんな場所で、花を植えるように、種をまくように、話し合う。
こんなに話し合う必要はないんじゃないかな、とお互いに、いう。
まるで迷宮みたいだ。ふつうの感じのいい小さな家に入ったはずが、
迷宮を歩いている感じなんだ、とわたしは、いう。
話し合いとは、歩くことでも、走ることでも、ない。
お互いを踏み倒すことでも、けなしあい、ののしりあうことでも、ない。
目標があるわけでも、到達点があるわけでも、ない。
だから、夜があけても
ひたすらに話し合うんじゃないかな、とだれかが、おもう。
だが、そのだれかをわたしはしらずに、
まだ話し合いつづけて、いる。ちらっと、つきが、みえる。
わたしは、きづかないふりをする。
それでも、思う。あれは月だよな、と。
話し合いながら、月のことを、考える。
やがて、朝がくることを、かんがえる。
砂漠をあるきつづけたせいで、
しらずしらずのうちに衣服に着いた砂をふりはらうように、
しずかに、わたしたちは、話し合いをつづける。
夜は、ふかく、ながいものだということを、わたしたちは、しる。
そして、夜が、明ける。つまり、朝が、きている。