もう何度も何度も
引導を渡されるので
うちには世界の貴重な引導のコレクションがある。
部屋にきた友人が、いう。
わたしの宝物なのである。
「これは、すごいですね」
ええ、そう、とわたしはいう。
象牙のような引導をわたしは手にする。
「これは、クリスマスの前日に
手渡された引導です。うつくしいです」
ときどき、深夜、
ひとの歩く音で、めがさめる。
だれかが・そとを・あるいている。
わたしは、めをひらく。
どこかから立ち去るおとなんだろうか。
わたしには・わからない。
でも、きいたことのある足音かもしれない。
わたしは、
深海のようなベッドからぬけだして、
引導を手にとって眺める。
美しい虹のような引導もある。
それはやみのなかでも、
にぶく、かがやきをはなつ。
私にとっては過酷で崖のような引導だったのだが、
その輝きはえにもいわれぬ美しさなのである。
引導をだいじにしまうと、わたしは、また、
ぐずぐずと深海に、はいって、いく。
あしおとが、やむ。