テクストはこれまで、


核のある果物(たとえば、あんず)


のようなものと見なされ


その果肉が形式で、


核が内部であるとされてきたが、

いまやテクストは、


むしろ何枚もの


薄い皮(いくつものレベルや体系)の

積み重ねから成る


たまねぎのようなものと


見なすべきなのであって、

その立体空間には、


最終的に、いかなる芯、


いかなる核、いかなる秘密、

いかなる還元不可能な原理も含まれず、


ただ外皮が無限に


重なっているだけであって、

そこに包まれているのは、


さに外皮の表面の


全体にほかならないのだ。





      ロラン・バルト「文体とそのイメージ」