女の子が
大量のうまい棒を
部屋に残していったことがある。
それは、用意周到に・隠して、あった。
何年か経ってみつけた棒もあった。
夜中
ブローティガンの朗読を聴きながら、
すこしずつ食べたことも、ある。
わたしは・かのじょに、かつて
ブローティガンの朗読を
聞かせたことがあった。
Love poem、という詩だ。
なんていってるの、これ、
とわたしは、聴いた。
……ひとりきりで朝おきるのは……
いいものだ……愛しているひとに対して……
愛してるって…いう必要がないから……
とぎれとぎれかのじょがそう訳したので
ふうん、そう、とわたしは、いった。
それでラヴ・ポエムっていうんだ、
とわたしは続けていった。
なんでもないんだぜ
というふうな感じで。
かのじょはつまらなそうな
顔をしていた。

ともかく、
彼女が去ってなお
おびただしい量の棒が
部屋のあちこちに
みえないかたちで
散在していた。
ひっきりなしに、棒だった。
これだけ、ふんだんに棒を残していった彼女が
何をいいたかったか謎だが、
うまい棒は、それでもやはり、美味しかった。
今でも、
あたらしい花の名前を
みつけるように、
さがし出しては、食べている。
おいしい棒だ、とわたしは、ひとり
声に出して、いう。