「図書館」は、


その規模がどのようなものであっても、

本来的に、際限のないものである、





というのも「図書館」は常に、

欲求を下回ると同時に上回るからである。




「図書館」にはある癖があって、

欲しい書物は決してない、


かわりに別の書物を提供する。





「図書館」は、


欲望の対象の


代理物に満ちた空間なのである。

「図書館」は、


常に大きすぎるか小さすぎて、

「欲望」とは根本的に合致しないのだ。





「図書館」の場合、


おきてとなり、去勢をおこなっているのは、

まさに書物のおびただしさである。





      ロラン・バルト「読書について」