「頭の中だけだったら、

六時五十五分で


すむんですよ。




ころが、


この体がある。

体はどこかにある。




体は誰かと対してる。

体は誰とも対してない。




体は疲れてる。

体は疲れてない。




この


どうしようもない

具体の中にしか

六時五十五分は

宿ることが出来ない。




つまり、

あなたは、

それこそ何通りもの

六時五十五分を告げるんです」





「なんか恨みでもあるんですか」





「え?」





「私に何か恨みでも」





「ありませんよ」





    岩松了『食卓で会いましょう』