日曜日の午前、弟が鼻息荒く帰ってきた。
「見て! ガチャガチャで当たった!」と、掌に乗せたのは金色のキーホルダー。
だけど、どう見ても古びた真鍮の南京錠で、しかも鍵がない。
「これ、絶対ガチャじゃないやろ」と私が言うと、弟は「知らん。出てきたもんはもらう」と胸を張った。
母は洗濯物を干しながら、「それ、誰かの落とし物ちゃう?」と眉をひそめた。
弟は「じゃあ、ナナの首輪につけとくわ!」と犬の元へ走っていった。
庭から「似合うやん!」という声と、ナナの迷惑そうな鼻息が聞こえた。
昼過ぎ、姉が友達を連れて帰ってきた。みんなで居間のこたつに集まり、ポテチを広げて大笑いしている。
私はその横で宿題をしようとしたけど、笑い声とスナック菓子のにおいで集中できない。
「ちょっと静かにしてよ」と言ったら、姉の友達に「妹ちゃん、真面目やな〜」と笑われた。
夕方、父が仕事から帰ってくるなり、弟の首根っこをつかんだ。
「お前、商店街のガチャガチャいじったやろ!」
どうやら弟が回したのは、本物のガチャではなく、景品補充中のカプセル機だったらしい。
南京錠は店の引き出しを止めるための物で、店主のおじさんが慌てて探していたという。
母は「あーあ」とため息をつきつつも、晩ごはんのカレーをかき混ぜながらこう言った。
「でも、その南京錠……なんか見覚えあるわね」
私が「どこで?」と聞くと、母はしばらく考えて、「昔、うちの物置にあったやつに似てる」と言った。
その物置は、今は鍵がかかっていて、誰も開けられないはずだった。