ダンボ
制作国:アメリカ(2019)
上映時間:112分
日本公開日:2019年3月29日
監督:ティム・バートン
脚本:アーレン・クルーガー
撮影:ベン・デイビス
出演:コリン・ファレル、マイケル・キートン 他
あらすじ:サーカスに、愛らしい子象が誕生した。“大きすぎる耳”をもった子象は“ダンボ”と呼ばれ、ショーに出演しても観客から笑いものに。ある日、ダンボの世話を任されたホルトの子供ミリーとジョーが、悲しむダンボを元気づけるため遊んでいると、ダンボがその“大きな耳”で飛べることを発見する。(公式サイトより)
評価:★☆☆☆☆
◆感想(ネタバレなし)
『ダンボ』の実写化。企画を聞いた時点でそれはヤバいんじゃないかと思っていましたが、怖いもの見たさで観てしまいました。それを反省しながらこの文章を書いている次第です(笑)
アニメのダンボはダンボも含め主要キャラクターはほぼ全て動物でしたが、今作は予告編にもある通りダンボ以外は人間です。そしてその人間側のドラマがことごく上手くいっていない感じでした。
大きな耳で象が空を飛ぶということのリアリティの無さは、ダンボを姿は象だけれど行動は象としてリアルにはしない、という描き方で巧く切り抜けていたように思います。少なくともダンボは可愛かったというのが今作唯一の救いだと思います。
*以下ネタバレです。
◆ネタバレ
サーカスに出演したダンボはアクシデントからショーの最中に空を飛ぶ。ダンボに目を付けた興行師ヴァンデバー(マイケル・キートン)はサーカスごとダンボを自分のテーマパークに連れてきて、曲芸師のコレット(エバ・グリーン)を背中に乗せて飛ぶように指示する。しかし、ショーの途中でテーマパークの一角に引き取られていた母象のジャンボの声を聞きつけたダンボは、ショーのテントから飛び出してしまう。ショーが失敗に終わったことで腹を立てたヴァンデバーは母象ジャンボの処分を命じる。ダンボの飼育係のフォルト(コリン・ファレル)はコレットやサーカスの仲間と一緒にジャンボを救出し、ダンボとともに故郷の森に返す作戦を立てる。作戦は成功し、ダンボは母と共に仲間の象たちに出会い、フォルトたちはヴァンデバーとたもとを別ち新たなサーカスをスタートさせる。
◆感想(ネタバレあり)
本当に色んなことが噛み合っていない作品なので、どこから突っ込んだものか、という感じなのですが…。
アニメのダンボはずっとコンプレックスだった大きな耳が実は自分にしかない長所だとわかる話でしたが、今作ではダンボは別に耳をコンプレックスと感じている描写はないし、物語の早い段階で空を飛んでしまいます。ダンボというキャラクターが広く認知されている今、物語の早い段階で空を飛ぶという改変は悪くはないと思うのですが、そのせいで物語的な焦点がぼけてしまった感が否めません。
主人公のホルトは戦争中に片腕を失い、妻を失い、曲馬師としての地位も失いという無い無い尽くしの主人公です。ドラマが生まれそうな感じなのですが、片腕を失ったというコンプレックスは良くわかないうちに解消されているし、妻を失った悲しみを子供達と一緒に乗り越えていく描写とかは別にないし、曲馬師として地位を失った代わりにダンボの飼育に喜びを見出していく描写も別にないので、なんというかよくわからない主人公になってしまっています。
曲芸師コレットと子供達やダンボとの絆もなんだか唐突に発生した感じで、ここの描き方ももっと何か工夫ができそうだったのにいまいちでした。
個人的に一番残念だったのが母象ジャンボを脱出させるシーン。サーカス団員たちがそれぞれの特技を活かしてジャンボを救出する見せ場なのですが、そもそもそれほどダンボにもジャンボにもそれほど思い入れの無さそうだったサーカス団員が一転してジャンボ救出に力を貸すことが唐突な印象でした。しかもサーカス団員がそれぞれの特技を披露するのはここが最初なのです。これは絶対に伏線として前半でサーカス団員がショーの中で自分達の特技を発揮する場面を見せておくべきだったと思います。そうすれば、ジャンボを救出するシーンで、この人がこの特技をこう使うのか、という楽しさが増したと思うのです。
そしてこのジャンボの救出に肝心のダンボが積極的には絡まずに、単にジャンボとの合流地点に飛んでいくだけというのが勿体ない気がしました。
他にも、ジャンボとダンボが引き離される直接の原因を作った前任の象の飼育員が結局何がしたかったのかわからないとか、ダンボはサーカスの仲間の象からも疎まれる描写があったけど野生の象のところに行って平気なのかとか、最初から凄くダンボに理解のあった蛇使いの見せ場があまりないとか、ダンボが飛ぶときに羽を吸い込むのが痛そうとか、コレットとダンボのショーが練習と本番でシチュエーションが違い過ぎるとか、ヴァンデバーが最後にいくらなんでも癇癪を起しすぎとか、突っ込みたいところはいろいろあります。
これは個人的な意見なのですが、ダンボがどうしたら上手に飛べるようになるかというスポーツ映画っぽい要素がもっとあっても良かったのではないかと思うのです。ダンボが飛べるように工夫していく段階で、ダンボと人間の絆や、ホルトと子供達との関係が修復されていき、クライマックスのジャンボの救出劇で練習したことが功を奏する…という展開だともっと見易かった気がします。(ただ、それはティム・バートンの作家性ではないのでしょうけど。)
総じて言えば、いろんなところが噛み合っておらず、雑な映画のような気がします。3月の映画にはもっと評価の高い映画がやっているので、時間のある方はそっち優先で、今作が観たければDVDが出るまで待つのがおススメです。
◆まとめ
・ダンボが可愛い。しかし、そこしか良いところがない。
・いろんなところが噛み合っていない雑な映画。