ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
制作国:アメリカ(2019)
上映時間:132分
監督:マイケル・ドハディ
制作:メアリー・ペアレント 他
製作総指揮:バリー・H・ウォルドマン 他
脚本:マイケル・ドハディ、ザック・シールズ
撮影:ローレンス・シャー
視覚効果:ギョーム・ロシェロン
出演:カイル・チャンドラー、ベラ・ファミーガ 他
あらすじ:前作から5年後の世界を舞台に、モスラ、ラドン、キングギドラなど続々と復活する神話時代の怪獣たちとゴジラが、世界の覇権をかけて戦いを繰り広げる。また、それによって引き起こされる世界の破滅を阻止しようと、未確認生物特務機関「モナーク」に属する人々が奮闘する姿を描く(映画.comより)
評価:★★★★★
◆感想(ネタバレなし)
今年の大作映画と言えば『アベンジャーズ エンドゲーム』『スターウォーズ エピソード9』、そしてこの『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の3作ではないかと思います。前2作はディズニー傘下の作品ですから、ゴジラは今年のノンディズニーのコンテンツとしては最大・最強と言っていいのではないかと思います。別にディズニーが嫌いなわけではないですが、マーベル、スターウォーズとお金になるコンテンツをことごとくディズニーが吸い込んでいく昨今、ゴジラにはノンディズニーキャラクター最後の砦として頑張って欲しいと思っています。
ゴジラ映画は大好きでシリーズの作品はもちろん全て観ています。ただ、ゴジラがお好きな方は分かると思いますが、ゴジラ映画はかなり作品ごとに作風に振れ幅があって、同じ“ゴジラファン”であってもゴジラに何を求めているかは人によって結構違ったりするんですよね。なので一応私個人のゴジラ映画の好みを記しておくと、私は「ゴジラに共感できる映画」が好きです。これは多分、私が90年代のゴジラ映画、いわゆる平成ゴジラのシリーズを観て育った世代だからなのだと思います。一番好きなゴジラ映画は何か、と言われると困ってしまうのですが『ゴジラvsメカゴジラ』、『ゴジラvsデストロイア』とかは結構好きです。今作の前作である2014年の『GODZILLA』も私は好きでした。一方で『シン・ゴジラ』のように共感を拒んでくるタイプの作品は少し苦手だったりします。
そんな私にとって今作のゴジラはかなり満足できるものでした。今作ははっきりと“ゴジラのヒーローとしての側面”を描くことに特化しています。物凄くお金をかけて作ったチャンピオン祭りみたいな作品です。そのため、前作もそうでしたが、ゴジラによってもたらされる脅威はほとんどありません。
正直、諸手を挙げて完璧とはいかない部分もあります。前作同様人間側の行動にはつっこみ所が多いですし、怪獣の描写についてもラドンの扱いはホントにあれで良かったのだろうか…と思ったりただ、“ヒーローとしてのゴジラ”という下手したら物凄くチープに見えかねない題材を真正面から描いて、しかもそれなり格好良く仕上げたというのは、そうした欠点を差し引いてもおつりが来る偉業だったと思います。
*以下ネタバレあり
◆ネタバレ
中国のモナークの基地で怪獣との音声によるコミュニケーションを研究していたエマ・ラッセルとその娘のマディソンが、過激な自然解放運動主義者(?)のアランに拉致される。二人はキングギドラの眠る南極に連れて行かれる。事態に気付いたモナークはエマの元夫であるマークを連れて南極基地に向かうが、エマは助けを拒んで自らの手でキングギドラを復活させる。実はこの拉致事件はエマの仕組んだものだった。人類の手によって破滅へ向かっていく地球を救うためには地球の守護者である怪獣たちを目覚めさせるしかないとエマは主張する。
しかし、キングギドラが目覚めたことで世界の各地でキングギドラに呼応するように他の怪獣たちが目覚め始める。キングギドラは宇宙から来た怪獣であり、他の怪獣たちを従える存在であることがわかった。キングギドラに対抗できるのはゴジラだけだが、米軍の放ったオキシジェンデストロイアーの直撃を受けたゴジラは重症を負ってしまう。芹沢博士はゴジラを救うためゴジラの隠れ家に核爆弾を移送して爆発させる。
復活したゴジラはボストンでキングギドラと交戦する。ゴジラの仲間であるモスラもボストンに向かい、キングギドラの手先となったラドンを倒す。キングギドラは発電所からエネルギーを吸収しゴジラを追い詰めるが、モスラがゴジラを庇ってキングギドラの攻撃を受ける。光になったモスラはゴジラのエネルギーとして取り込まれる。マディソンの説得で改心したエマの協力もあり、ゴジラはキングギドラを倒すことに成功する。しかし、キングギドラの首はアランの手に渡っていて…
◆感想(ネタバレあり)
ネタバレなし(のはず)の感想にもちょっと書いちゃいましたけど、やっぱり気になったのはラドンの扱いです。キングギドラの強さを目の当たりするや否やソッコーでキングギドラにひれ伏すラドン…見たくなかった、そんなラドンは見たくなかったよ日本のラドンは地球を守るために3回もキングギドラと戦った勇敢な怪獣だったのにまだ他のファンの方の感想を読んだりはしていないのですが、この「ラドンのプライド問題」は間違いなく議論の的になるはずです。
モスラファンの私には、実はモスラの描写についても少し気になるところがあります。ゴジラに匹敵する怪獣として描いてくれたのは嬉しいのですが、モスラのアクションの描き方はあまり良くなかったと思います。モスラの攻撃を描くのであれば、きらびやかな鱗粉攻撃のように神秘的な印象の攻撃を繰り出して欲しかったのですが、今作ではまさかの針(爪?)をぶっ刺すという超物理攻撃これはちょっといかがなものかと思いました。
人間側の行動については、劇中でも言われていますが、流石にエマの行動が狂人的過ぎて理解できませんでした。これだけの行動を起こしたわりにはキングギドラが宇宙怪獣だということに気付いていなかったって相当迂闊ですし、冒頭でついさっきまで一緒に働いていた人達を犠牲にしてまで狂言誘拐を実施した意図も良くわかりませんでした。
そんなエマの思想とモナーク側の思想の差別化もあまり上手く描けていなかったと思います。モナークが怪獣を殺さない理由が芹沢博士のセリフの“共存できるかもしれない怪獣がいるかもしれないから”というのはいくらなんでも弱すぎます。
細かいところだと、芹沢博士がゴジラのもとに核爆弾を持っていくシーンで「さらばだ、友よ」と言いますが、ゴジラは一応神なので「友」はちょっと…と思いました。ここはゴジラの神々しさに圧倒されて膝まずくぐらいで良かったのではないかと思います。
色々不満をいいましたが、前述の通りゴジラを馬鹿馬鹿しくなくヒロイックに描いてくれたことにはメチャメチャ感謝しています。今作をスタイリッシュに見せている大きな要素は音楽が担っていると思います。オリジナルのテーマをアレンジしたゴジラ、モスラのテーマは本当に良かったです。
あとエンドクレジットの怪獣役がすべてHimselfと書いてあったのがおかしかったです(モスラはHerselfだったと思いますが)。
エンドクレジット後の映像を見る限り、恐らく次作の『ゴジラvsコング』ではキングギドラ由来の怪獣が現れて、ゴジラ、キングコングと戦うのでしょう。楽しみになりました。
~追記~
チャン・ツィイーが演じていた科学者の“西洋のドラゴンと東洋の龍”の違いの説明は何かの伏線だったのでしょうか。怪獣界の“東洋の龍”と言われればやっぱりマンダなのですが。『ゴジラVSコング』に出てきてくれたり…しないかな。
◆まとめ
・ゴジラのヒーローとしての側面を格好良く描いた作品
・音楽が良い
・ラドンの扱いは…