本『年上の女性』をはじめから読む → scene1


彼の前では、子供になってしまう。

アイスクリームを、やっぱり子供のように美味しそうに食べる私。

「洋子さん、甘い物、好きですか?」

「うん!好き」

元気に答える私。

「俺も好き」

耳の近くで、少し小さく呟く彼。



ドキッとした。



彼が好きだと言ったのは、甘い物の話。

いちいち、考え過ぎる私。

相当おめでたいな・・

思って、アイスクリームを頬張った。

「よく、店でプリンとかエクレアとか買ってるから、甘い物好きなのかな?って」

甘い物は確かに好きだが、コンビニで別に買う物がないから買ってるだけなんだけど・・。

覚えててくれたんだ。

そっか・・だから、アイスクリームを買おうと思ったのか。

「あぁ、そう、よく覚えてるね」

「あぁ、まぁ、はい」

少しぶっきらぼうになる彼。

照れてるのかな?



閉店時間が迫り、最後に観覧車に乗ることにした。

向かい合わせで座る。

彼を見れなくて、外の景色ばかり見る。

彼も外ばかり見ていた。

沈黙が続く。

後ろのゴンドラに乗ってるカップルがキスをする。

彼も私も見てしまった。もちろん、何も言わずに慌てて目線を外す。

沈黙・・・・

・・・・・

・・・・・

「洋子さん・・」



彼の綺麗な瞳が真っ直ぐ私を見る。

息が止まる。

心臓の音が木霊する。



ほんの少し彼が動きかけた時、扉が開いた。

「お疲れ様でした~」

気のない声で、係員が言う。

地上に着いてしまった。




キス・・されるかと思った。




私、何考えてんだ。

バカみたい・・バカみたい・・


彼が先に降りて、私を支えるように寄り添う。

手を差し延べてくれても良いのに・・・

違う・・

私が彼と手を繋ぎたいのだ。



帰り道、なんとなく、ぎこちない二人に戻っていた。

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