こんな店に来るつもりは全く無かったのに…。
そのお店は雑居ビルの5階にあって、いかにもって感じでした。
すべては、町でティッシュ配りをしていた博士という人のせいだ…。
僕が博士と初めて会ったのは、博士が町でティッシュ配りをしている時でした。
博士は長い髪と長いヒゲが特徴的な浮浪者風情漂う格好をしていました。
そしてティッシュを配りながら、僕に話しかけてきました。
「君は昆虫について考えた事はあるかい?
ま、君みたいな低脳な人間は自分の事しか考えないで生きているんだと思うけど…。
とりあえず、虫ってのは凄いんだよ!何が凄いかって?
それは彼らの神経回路のことで、彼らは自分の死を覚悟すると
痛みを感じる神経回路を切断し、痛みを感じる事なく死んでいくんだよ!!
要するに、これを人間に活用できれば、痛みを感じることなく人間は
生活することができるようになるんだよ!!
まさに漫画の世界の様な死をも恐れない人間戦闘マシーンが作りだせるんだよ!!
この事実に君はロマンを感じないかい?逆にこれをロマンと言わずになんと言うんだよっ!!」
何かめんどくさいし、気持ち悪いので、ぼくはティッシュを受け取り、
「人間に活用できるようになったら教えて下さい」
と、だけ答え足早にその場を立ち去りました。
それから数ヵ月後、ぼくはまたティッシュ配りをしている博士に
偶然会ってしまい、また話しかけられました。
「やっと分かったんだ。解明できたんだよ。
人間も神経を切断し、痛みを感じなくなれるんだよ。」
どうやら博士は、数ヶ月前に会ったぼくの事を覚えていたらしく
神経回路の切断について続きを話してきました。
しかし、前回会った時よりも元気がなく、
なんとなく落ち込んでいる風にも見えました。
ぼくも根は良い人間なので、仕方なしに博士の戯言に調子を合わせ、
「凄いじゃないですか!これで人間戦闘マシーンが生み出せるんですね!!」
と、少しテンションを上げて答えてみました。
しかし博士は、
「人間の不条理に私は絶望している…。
確かに人間の神経回路を切断し、痛みを感じない人間を作り出すことはできる!!
しかしそれは、あくまでも理論上の話だ…。
実際に神経回路を切断しようと手術をすると、想像を絶する痛みで結局死んでしまうんだ…。」
「え----っ!!
痛みを感じない体にする前に痛みで死ぬって、ダメじゃん!!」
「確かに研究は失敗かもしれない…。
しかし、昆虫にできて人間にできないという事を逆の観点から考えると
昆虫は痛みを感じることができない生き物ということになる。
その点、人間は痛みによりさまざまな事を覚え、学習していくことができるではないか!
要するに私の結論としては痛みとは神が与えた人間が進化をする上で
必要不可欠な要素の一つだったと思われる!!
君はまだ本当の痛みの素晴らしさをしらないんだ!!
悔しかったら、痛みの向こう側に行ってみろ!!!!!」
僕はなんだかよく分からなくなり、
「なんか、すみませんでした…」
とだけ言い残し、その場を立ち去った。
そして今、僕は雑居ビルの1室で服を脱がされ、
目隠しと手錠をされた状態で四つんばいになっている。
目隠しをされているので、回りの状況は分からないが女性の声がした。
「痛みの向こう側に行かせてやるよ!!」
次の瞬間、僕の体に銃弾で打たれたような痛みが走り、
同時に痛みを超える快感を感じてぼくはイッた…。
耳元付近で女性が話し掛けてくる。
「どうやってこの店の場所が分かったんだい?」
ぼくは握り締めていた博士が配っていたポケットティッシュを見せた…。
以上