彼の足が、止まった。
繁華街の路地裏、搬入の車が出入りするような
人通りの少ないビルの裏だった。
それまで私の手を引くように歩いていた彼が
私の方へくるりと体を向けて、尋ねる。
「キスしてもいいですか。」
私はしたい気分ではなかったけれど
かといって断る理由もない。笑
***
こういう時、彼氏や好意を持つ相手であれば
嬉しさと恥ずかしさではにかみながら
私はうんうん、と頷いて、
“来て。”という意思表示で相手のもう片方の手をつかみ
ぐっと引き寄せるだろう。
若しくは、私が全くその気のない男友達であれば
「ねぇどうしたの?笑」とおどけて誤魔化して
お互いの心にちょこっと気まずいしこりを残したまま、
何事もなかったかのようにまた歩き出すだろう。
でもまだ距離も縮まっていない相手、
まして年上で少なからず私に好意を持ってくれている相手に
私はどう反応して良いかわからず
「えっ、はい・・」
と驚きつつ同意してしまうしかなかった。
***
彼の柔らかすぎず薄すぎない
清雅な唇が私の唇に重なっていく――
***
次でラストかな。
また明日にでも。
まちこ。
