フェルメール

 話題のフェルメール展を観てきた。『牛乳を注ぐ女』は、あまりに有名で、本やポスターで何度も見て、やはり光にあふれた画面に引付けられる。展示では、まず、解説のビデオがあり、遠近法やポワンティエの技法を紹介されており、次の部屋が『牛乳を注ぐ女』だけの展示室になっていた。絵に対面すると、なんだか記憶にとどめようとしすぎて、期待も膨らみすぎていて、直後は「観た」という感想しかなかった。上手に観れなかったなとも思うが、実物からは、明暗のコントラストを強く感じたし、落着いて存在感の有る青も印象に残った。
 オランダの風俗画は暗いトーンで温かい色合いで小さいと感じた。小さいながらも細部まで描き込まれていて、花や食器なども人物と同じだけ力が入っていて、職人的である。モチーフも、呑んだくれのおっさんや、家事をする女性や、普通に暮らしていそうな人達だし、場所も室内が多く、当時の生活・服装がわかって面白い。
 中でも気に入ったのは、ヤーコブ・マリスの『窓辺の少女』と、クリストッフェル・ビスホップの『日の当たる一隅』だ。茶やオレンジが美しい。後者は水彩ながらも色がしっかりと置かれていて、テーブルクロスに当たる光がとても心地よい。

場所:新国立美術館
期間:2007.9.26-2007.12.17
セザンヌ

 仕事帰りに東京駅八重洲口で降りて、ブリヂストン美術館へ足を運んだ。セザンヌの作品が集まっているのだ。セザンヌを初めて観たとき、鮮やかでもないしデッサンも狂ってるし、なんで有名なんだろうと感じたのを思い出す。今でも多少は感じるし、モチーフの形が正しいとは思わないけど、だんだんと魅力が分ってきた。
 人物・静物・風景・水浴の4つの分野で展示されていた。展示点数は20点弱で、それほど多くない。モネの絵のように、日本の美術館はあまり所蔵していないのかもしれない。
 人物は2点あり、自画像と奥さんの肖像画。セザンヌは髭を蓄えて帽子をかぶって斜に構えている。少し変わり者で頑固そうな感じがするが、笑わせてみたいと思った。楽しそうに笑うんだろうな。奥さんは、ゆでたまごのようにツルンとしたかわいらしい人であった。2点ともセザンヌらしい細かいタッチをつないで描かれている。
 静物はとても良い。『砂糖瓶、梨とテーブルクロス』は、1度見て、出口まで行って引き返してもう一度見た。この絵の梨は、赤と黄色で描かれていて鮮やかだ。そしておなじみのテーブルクロスがモコモコとあり、少し傾いたテーブルになんとなく奇妙な遠近感を覚える。形を見ていると、やっぱりなんか変なんだけど、この絵画空間は気持ちが良い。
 セザンヌに影響された画家の絵も展示してあり、安井曾太郎の『リンゴ』が凄かった。りんごが鮮やか過ぎて、発光しているようだった。もっと安井曾太郎の作品を観てみたいと思う。
 セザンヌの水浴の下書きのような鉛筆画もあったが、こちらは失礼だが、もじゃもじゃした線の集まりに見えた。それでもセザンヌらしさを感じるから不思議だ。風景では、『サント=ヴィクトワール』の明るい絵があり、山の斜面が伸びやかに描かれていて、風が吹いているような、景色が移ろっていくような印象を受けた。清々しい。
 また少しセザンヌの面白さが分った気になって家路についた。
川合玉堂展

 川合玉堂は、「美の巨人たち」で知った。今日の一枚は『早乙女』で、日本の風景が見事に描かれていて感嘆した。すぐに画集を購入したほどだ。玉堂の絵を観ていると、風景はこう写し取るのだと言われているようだ。僕は、旅先でスケッチをする時、木や川をどう描くか考え込むことがあるが、お手本を見ている様だった。
 山種美術館で実物を観ると一段と画面の奥行きを感じる。空気遠近法で遠くの景色が、淡く輪郭が薄く描かれているのだが、濃淡やかすみ具合が絶妙だ。色彩は多用していないので、墨で表現しているのだが、達人だなぁと感じる。
 『早乙女』も不思議な構図だが、『湖畔暮雪』も不思議である。雪の積もった屋根が連なって、画面を斜めに白い面が並ぶ。離れて見ると抽象画のようで、近づくと写実的で、モノクロ写真のようだ。これ名作だな。

山種美術館
2007.9.8-2007.11.11
巴里展

 ムンク展で図録を買ったら、渋谷・東急で行われている「巴里に魅せられた画家たち展」の招待状を貰った。図録大好きなので、こういう特典は嬉しい。箱根の彫刻の森美術館のコレクションが来ているらしい。早速観に行った。
 まずは日本の洋画家の絵が並んでいた。安井曾太郎や佐伯祐三は知っていたが、他にも知らない画家の作品が豊富であった。安井曾太郎の『裸婦』には唸らされた。描写力がすごい。
 ルノワール、ピカソ、シャガールもあり、やはりルノワールの鮮やかな画面は際立っていた。ユトリロの絵もあって、若い頃の作品なので、作風が違っているのが面白かった。他にミロの抽象作品が目立っていた。絨毯のような布に色が塗られ、黄色いバケツが2つ付けてあった。バケツが目のように見えたりもするのだが、狙いは良く分らないが、印象に残るバケツであった。
 もう1つ、『髭の顔』というコラージュが面白かった。新聞紙のような紙を貼って、顔面を作ってるのだが、目鼻口は顔の上の方に追いやられていて、アゴが顔の半分を占めている。顔中を髭が覆っているように見えるのだ。笑いそうだった。観終わってから、一緒に行った友達と髭の話で盛り上がった。この友達も髭が濃いのだ。
シャガール展


 シャガールマニアにはたまらない。シャガールの写真と油絵と版画が並ぶ。シャガールってこんな顔だったんだな。もう爺さんになってる写真だけど、長い長い筆を持って、生き生きと描いてる。長年絵描きを続けてきた雰囲気がただよってる。奥さんととても仲が良いのも分かる。絵を描く時、奥さんが一緒にいることが多くて驚いた。
 展示されているのは版画が多い。油絵を観たかっただけに少し残念。ただし、色彩のファンタジーとあるだけあって、鮮やかな色彩がいっぱいで、人が飛んでたり、鳥や馬が登場してとても楽しい。聖書の作品群は、物語を知らないだけに良く分らなかった。滅多に観れない作品ではあると思う。
 気に入ったのは、『花嫁の回想』、『回想』。子供が画用紙をびりびり~と切り裂いたように画面が4つに分割されて、赤・黄・緑・青に塗り分けられている。色がドンと目に飛び込んできて、なんだこの構図は?とドギマギする。でもなんとなくまとまっていて、題名にあっていて上手いなぁと感心した。

場所:上野の森美術館
会期:2007.10.13-2007.12.11
ムンク展

 ムンクの世界にドップリ漬かれる展覧会だ。会場に入ってすぐに、自分がムンク色に染まって行く感じがする。有名な『叫び』は無いが、『不安』と『絶望』を観ると、ぐにゃぐにゃの空の下、画面を斜めに切る橋の上に立ってみたいなと思い。オレもこの変わった構図で絵を描いてみたいと思った。
 実はムンクの絵を観るのは初めてなのだが、自然を沢山描いていることに驚いた。謎めいた空間に人物を描く人だと思っていたのだ。ところが、大胆に木々が立ち並んでいたりする。とにかく気に入ったのが『声/夏の夜』だ。女性と木々と池に写る月が描かれていて、縦方向の線が印象的な絵だ。月が池に写って伸びて見えているところがとても魅力的だ。月が水面にただよっている雰囲気が伝わってきて、自分も木々の中にいるようなリラックスした気分になる。
 この展覧会は、「装飾画家」としての奇跡を辿るといった趣旨があるらしい。確かにムンクの絵を並べると、落着いた一体感があるから不思議だ。公的建築の壁画制作もあって、さすがに実物は展示されていないが、大きな仕事を任されていたと知った。大変、魅力的な画家である。

場所:国立西洋美術館
会期:2007.10.6-2008.1.6
巨匠

 兵庫県立美術館で千葉の川村記念美術館の所蔵作品に出会った。東京に住んでいて、神戸に帰省した時に観に行ったので、絵と一緒に関西に旅行したみたいで不思議であった。
 入り口にはレンブラントの自画像が1枚あって、次の部屋には印象派の絵が並んでいた。モネ、ルノワールもあったが、マティスの『肘掛け椅子の裸婦』に見とれた。装飾的な模様の入った赤いじゅうたんが引き立っていて、主題は、椅子や裸婦というより、じゅうたんではないかとも思った。とてもバランスが良い絵で、近くのソファに座って暫く眺めていた。このセンスを見習いたい。
 川村記念美術館は、抽象作品を沢山所蔵しているようだ。平面も立体も含めて抽象作品が多く並んでいた。抽象芸術が発展していく様子が分って面白かった。中でもアンディ・ウォーホルの『マリリン・モンロー』は傑作だと思った。マリリン・モンローの顔が様々な色でプリントされている作品で、知っていたのだが、実物は迫力が違う。ひとつひとつが90cm四方もあり、壁一面がマリリン・モンローだった。圧倒されて、でもあまりにおかしな光景だったので笑いそうになった。周りに笑っている人がいなかったので、声を上げて笑うことはできなかったが、これほどインパクトが強いとは思わなかった。奇妙な色合いになってるのがたまらんのだなぁ。


虹 総合 ドキドキドキドキドキドキ (13点)
ルノワール・ピカソ・モディリアーニ・ピカソ・・人気の画家の作品が並ぶ。日本画、日本の洋画も展示されている。ジャンルは幅広いながら上手に作品を集めていると感じる。ここで好きな画家を見つけるのも良いし、ひいきの画家の意外な作品に出会えるかもしれない。

1星星星星星
企画展ながら洋画・日本画がバランスよく展示されている。印象派の風景を堪能し、ピカソやシャガールのような画家の世界観に浸って、流麗な日本画や屏風を観る。贅沢である。

2 展示 星星星
ホテルオークラの地下二階にある。額の配置の加減か、自分が絵に写ってしまうのが残念。洋画、日本画、日本の洋画の順に並んでいる。椅子もあり、途中で休憩しながら観賞できる。

3 空き具合 星星星星
平日であったのもあり、空いていて落着いて観れる。

4 笑い 星
ルノワールの「魚の静物」が珍しかった。名品揃いである。笑いを探すなら、シャガールの絵が観れば観るほど、自由で微笑ましい。

5 カタログ
出品リストと代表作の載っている冊子がある。チャリティなのでしっかりとしたカタログは無いようだ。

会期 : 2007年8月1日(水)~8月24日(金)
会場 : ホテルオークラ
URL : http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/event/art07/index.html


虹 総合 ドキドキドキドキドキドキ (15点)
大正という時代が濃く出ている展覧会。庭園美術館の企画は目の付け所が素晴しい。この建物の中でこそ雰囲気を味わえるというものだ。絵画や着物から現代にはもう残っていない時代を感じるが、自分の祖父母の生きたそれほど昔ではない頃なのだと想いをめぐらせる。

1星星星
ハイカラというのか、日本と西洋の文化が混ざり合う時代が見える。洋服を着たうりざね顔の女性が、日本画で描かれる不思議さ。絵画の線は日本的でも、モデルは西洋に馴染もうとしている。大正時代がどのようだったかを体感した。

2 展示 星星星星
庭園美術館とは元皇族の住居だそうで、お屋敷の中で絵を観させてもらっている気分になる。部屋を回りながら絵や着物や陶器に見入る。帰りには庭園を散歩しアジサイをスケッチしてみる。テーブルやイスもあって、おしゃべりに興じるも良い。

3 空き具合 星星星
通路や部屋は広くは無いが、人がまばらなので鑑賞しやすい。

4 笑い 星
大正時代の水着の女性を描いた作品があり、シミーズと半ズボンが合体したような水着に驚く。このデザインでは現代の女性は恥ずかしくて着れないのではないか。

5 カタログ 星星星星
絵が大きく載っていて解説もしっかりしている。版画の色も綺麗に印刷されている。

会期 : 2007年4月14日(土)~7月1日(日)
会場 : 東京都庭園美術館
URL : http://www.teien-art-museum.ne.jp/
概要 :
ホノルル美術館の日本美術コレクション。「絵画と 版画」「装飾美術」「きもの」「大正時代の流行歌の本」の4 つのテーマで構成され、モガ(モダンガール)などの時代風 俗を描いた日本画、アール・デコの影響を受けた、ユニークで 斬新な柄の着物や工芸品など約80点が、新たな視点でとらえられています。
モディリアーニ
虹 総合 ドキドキドキドキドキドキ (16点)
これほど沢山のジャンヌの絵を観る機会はもうないだろう。加えてジャンヌの絵は個性的で面白い。デッサンも沢山展示されていたが、どれも線に迷いが無い。形があっているかどうかは不明だし何を描いたのか想像できないものもあるけど、爽快だ。静物画の構図が独特で、僕はキュビズムに影響を受けているように見えた。肖像画ももちろん多くて、年齢によって描き方が変わっていく。モディリアーニに出会ってからは首の長い人物になり、ありありと影響を受けている。一方モディリアーニの肖像画でジャンヌをモデルにした絵もあって、見事にモディリアーニ風にアレンジされている。ジャンヌはどう思ったのだろう。あまり似てないけど素敵だと思ったんだろうなぁ。
二人の人生を辿るように絵が展示され、モディリアーニの絵が沢山観れる。そして、ジャンヌの絵に魅了される可能性もあり、モディリアーニ好きでなくても楽しめる美術展であった。


1星星
ジャンヌの絵が観れるのは貴重だ。生まれ持った個性が、周りの影響を受けて成長していく様子が分かる。巨匠の作品とは違い、気軽に観れるのも良い。モディリアーニの素描も沢山あり、落書きみたいなものまであり、ファンにはたまらない。

2 展示 星星星
絵本の挿絵が話と共に飾られていたり、スケッチブックにデッサン(落書き??)したものまで、マニアックな絵を上手に展示してあった。絵が逆さまになっているものがあり驚いたが、これはキャンバスの裏表に別の絵が描かれており、裏の絵の向きにあわせてあった。


3 空き具合 星星星
1枚の絵に3~4人程度。すこし待っていれば正面で観れる。

4 笑い 星星星星
二人とも、デッサンに迷い線がなく一筆書きのようだ。この線が自由奔放すぎて可笑しい。ジャンヌもモディリアーニも作品とは思っていない画用紙の切れ端まで展示されているからなのだが、たまらなく可笑しい。

5 カタログ 星星星星
ハードカバーで凛々しいカタログだ。展示されている全ての絵が載っているし、解説もしっかりしている。

会期 : 2007年4月7日(土)~6月3日(日)
会場 : Bunkamura ザ・ミュージアム
URL : http://www.bunkamura.co.jp/shokai/museum/index.html
概要 :
優雅な曲線と哀愁を帯びたうつろな瞳の肖像画で知られるアメデオ・モディリアーニが、画学生ジャンヌと出会う。二人は共に生活するが僅か3年で帰らぬ人となる。作品と共に二人の軌跡を辿る。(オフィシャルHPより抜粋)