製造業で取り扱う経営資源の中で、最も後手に回りやすいのは実は技術情報である。

それは職人という響きが、時間を要して熟達していくという印象があるように、ものづくりが一長一短ではなりえないという価値観が根付いているためである。

日本の高度経済成長で得た技術は、世間一般からは陳腐化することなくしっかりと伝承され、今後も世代をまたぎながら、さらに向上していくことを当然のこととして期待しているが、伝承を単なる経験と捉える限り、今以上の成長は難しい。

経験を能力という器と、そこに入れる知識として捉えると問題を理解しやすい。

能力は守破離の守に当たる時期を確実に到達させる課題が増している。その根底には、環境の変化へ追従する速度に、守らせる前から、離れることを強要している組織としての矛盾がある。

次に知識についても、過去からの巻物として蓄積のプロセス、つまり事象と事象の行間に含まれる暗黙知も含めた理解が可能なツールが必要なのだが、デジタル化による弊害が現れている。処理速度を優先した考え方に、学習という時間も侵食され、従来何度も読み込むことで得られていた行間を読み解く術が、表面的な効率化という罠によって著しく低下してしまった。

ではどうするか。

まずは能力については、目標到達までの見える化とコーチングが有効である。見える化は説明するまでもないが、能力を上げたいというコミットメントを例えば部下、上司という関係でしっかり取ることが大前提に必要となる。そして、能力を上げるのは自分で意識してトレーニングするほかないため、直接的な指導にはコーチングが有効である。本人に考えさせ、本人に工夫させる。単に放任とならないように、良質な質問やフィードバック、そして適当なチャンクダウンを示唆し、目標まで着実にステップアップするのを促す。ここには、コーチングの専門的な知識やノウハウが有効であるため、一定の学習を準備すると良い。