先行上映を観た感想です。

 

以下、ネタバレあります↓

 

 

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時は1980年代。昭和の終わりころ。

携帯電話も、インターネットもない時代。

海と山、自然に囲まれた長崎の町で伸び伸び育つ子ども達。

 

風景の描写がとても美しく、蝉の声などの夏を感じさせる「音」のBGMも効果的で、映画が始まってすぐに物語の中に引きこまれていきました。

 

主人公はなんだかいつも困り顔の久田と、学校で変わり者と言われている竹本。

まあ・・・変わり者=家が貧しくて色々なことをからかわれていることから派生しているのでしょうが。

貧しい家で育つ竹本に対して、昭和の子ども達はまっすぐに残酷だ。

あの頃、いじめという概念が世間にあったかどうか、よくわからないけれど

竹本のことをからかう小学生たちの様子は見ていて胸が痛かった・・・

 

子どもは親を選べない。

そして生まれ育つ環境がどんなものでも、ただ受け入れるしかない。

 

のだと改めて思い知る映画だった。

 

久田君の家庭の描写は、とてもよかった。

肝っ玉なお母ちゃんと、ちょっといい加減なお父ちゃん。

まあ、この夫婦が実に秀逸!

こういう親、いるよねぇ。

っていう説得力に溢れる2人の演技だった(笑)

尾野真千子ちゃんが、何かにつけ子どもを容赦なくバシバシ叩くのがめっちゃリアル。

そうだよー昭和の子育ては、あんな感じだったよ~って笑えてきた。

私も親にしばき倒されて育った(爆)

今だったら児童虐待で通報されそうだけどね(汗) 

口よりも先に手が出るけど、愛情はしっかりあるのが伝わってくるお母ちゃん。

彼女の出世作「カーネーション」もそうだったけど、こういう逞しい母親を演じさせたら今右に出るものいないんじゃないか、と思うオノマチ。最高ですグッ

 

そして竹原ピストルさん演じるお父ちゃんが、想像を遥かに超えてよかった!!!

ガサツですぐ下ネタに走り「給料安いんじゃ!」って妻に文句言われる昭和のオヤジ。

だけど、男親らしくいつも大らかに子ども達を見守っているのがとてもよかった。

物語の終盤で、久田を抱きしめる場面は・・・泣いた汗

まさか、竹原ピストルさんに泣かさせるとは思いも寄らなかっただけに、泣いた汗

先行上映、実はうちの配偶者と一緒に観たんですが

夫もそこで泣いたそう。

「あれは、アカン」と(香取慎吾と同じような感想www)

もしかしたら、この映画は40代以上の男性により刺さる映画なのかもしれない。

 

PRで大々的に言われている「イルカを探す旅」については、確かに少年のひと夏の冒険、って感じで面白かった。

(「そんなのアリ?」のツッコミどころもあったけど・笑)

冒険の最後(帰り)に、久田の家の前で別れる2人。

互いに何度も言い合う「またねー!」「またねー!」の応酬・・・

そうだった。

夏の日がとっぷり暮れて、家に帰らなきゃいけなくなっても、友達と別れるのが名残惜しくて何度も振り返って手を振り合った日が、私にも確かにあった・・・

「またね!」に込められた感情が懐かしくて、思わずホロリ汗

でも

全部観終わってみたら、この物語の主題はそこ(冒険)ではないのかな・・と感じました。

きっと多くの人が似たような思い出を持ってるから自転車に乗って出かける旅は観る人の郷愁を誘うエピソードではあると思うけど

私は「冒険のその後」に胸を打たれました。

 

 

一緒に冒険に挑んだ1日は2人の距離を一気に縮め、その後の夏休みをつるんで過ごす少年2人の描写がよかった。

みかん畑の内田のジジイとの攻防が特に(笑)

しかしあれがまさか、最後の伏線に繋がるとは・・・岩松了さん、さすがでした。

泣かされました汗

 

今はこんな不寛容な時代だからこそ、あの映画の中の様々な出来事がよけい眩しく見えるのかもしれない。

あの頃の大人たちは皆、あんな風に地域の子ども達をおっきな優しさで包んでいたんだなぁ・・・と思わずにはいられない。

なんて平和な時代だったんだろうか。

 

そして冒険をきっかけに仲良くなった久田と竹本なのに、ちょっとしたことをきっかけに小さな溝を作ってしまう・・・

子どもは、その小さな胸の中に色んな思いを抱えているものなんだということも、思い出した。

大人が何気なく言った些細な言葉も、子どもにとっては傷つく大きなトゲになるんだね・・・自分の感情を持て余し、本当は仲良くしたいのに何だか気まずくなる2人。

 

そこに、あんな出来事を重ねてくるなんて・・・監督むごい(褒めてます)

 

子どもは親を選べない。

そして生まれ育つ環境がどんなものでも、ただ受け入れるしかない。

 

その現実を、残酷なまでに知らされるクライマックス。

子どもの目線でも、親の目線でも、泣いてしまった汗

 

久田と竹本の別れの場面は、絶対ハンカチ用意して観てほしい。

慎吾が「カメラがなかったら号泣していた」という意味、すごくわかるから。

そして、これをラジオドラマとして朗読していて、途中感極まって読めなくなったという剛君の心情も痛いほどわかる。

剛君が

「親はただ、子どもをギューッって抱きしめたら、もうそれだけでいいんじゃないかって思える映画」

だと言っていたけれど、まさにその通りだなぁと実感する。

そして、私は自分の息子達をあんな風に抱きしめていただろうか・・・?とつい自問してしまう。

泣きながら反省。もう遅いけど(苦笑)今は抱きしめたくても逃げられる。「オカン、気持ち悪い」ってwww

 

映画のタイトルになっている「サバカン」は、ほんのちょっと出てくるだけのエピソードだけど

とても効果的に使われているなぁと感じました。

映画の冒頭、大人になった久田(剛君)が色々あって人生行き詰っている時に缶詰を見て過去の記憶を辿るという流れがよかった。

そして

人生は誰もがきっとプラスマイナスゼロなのかも・・・

少年の時に過酷な人生を与えられた竹ちゃんが、ちゃんとした大人になって、夢を叶えていたことがわかるラストシーン、すごくよかった。

そして、今は物書きとして鬱々とした日を過ごす久田も、実は竹ちゃんから言われた「久ちゃんなら、なれるよ」という子どもの頃の夢を叶えているのですよね。

 

最後は、本当に心が温かいもので満たされる映画。それが「サバカン」だと思います。

自分が忘れかけていた色々な気持ちを思い出せる作品です。

 

もうあちこちで言われているけど、エンドロールが終って、灯りがつくまで席を立たないでほしい。

本当のラストも、素敵ですよ。

 

あ、ちなみに

 

この380秒の予告ですが・・・本編にない映像、結構あるね(笑) 

と、観たあとで気づいた。

なので、映画を観てからもう一度予告を観ることもオススメです!

 

 

以上、超個人的な「サバカン」の感想でしたニコニコ

いやホント#金沢監督天才