作詞家小倉めぐみさんを偲んで。
つづきです。
【がんばりましょう】以降、大きくはじけたSMAPの快進撃は怒涛のようなムーブメントとなって日本全国を席捲します。
1994年から95年はテレビ雑誌ラジオ、あらゆる媒体でSMAPを見ない日はない状態。
ファン層もグッと広がり中高生や年上女性だけじゃなく、老若男女誰もがSMAPの6人に好感を持つ、そんな存在に彼らはなりつつありました。
そんな中で次に小倉さんがSMAPに提供した作品は
1996年の春に発売されたアルバム008 「TACOMAX」に2曲。
【それじゃまた】 (アルバム008 「TACOMAX」収録)
【気になる】 (アルバム008 「TACOMAX」収録)
時代の追い風に乗って「SMAP」がますます高みに昇ろうとしていた頃です。
このアルバムジャケットからも、王者の風格とでも言いましょうか・・・完成された6人の堂々たるオーラを感じます。
008に収められた小倉さんの曲は、どちらも今でもファンに人気の高い曲ですよね。
小倉さんの詞は、作品の中で少しずつSMAPに歳を取らせている、と前記事で書きました。
少年から大学生、そして社会人へ・・・という成長が感じられる数々の曲たち。
【それじゃまた】 に描かれる世界観もまた、社会で夢と現実のギャップを感じながらそれでも何とかやっていかないとね、と若者が自分に折り合いをつけるような、そんなペーソスを感じる作品だと私は感じています。 → それじゃまた ~ Uta-Net
>信じてると 夢はかなう
それは あやしい
>結局 かなわなかった
夢もあるしさ
はずしてた ムダな努力は
やっぱりムダだし
この、人生の本質を突くような鋭いフレーズよ・・・
本当にそうだよね、と何回頷いたことか。
夢を叶える人生は、万人に共通ではない。
いくら努力しても、叶わない夢、願いは山ほどある。
自分のやったことが報われない日も無数にある。
でもそれでも
>なんにしても 結果が
どうであっても 夢中に
参加することに意義があると信じ
やっていこうよ
という小倉さん・・・
>それじゃまたね お疲れ様
今日はどうでした?
ってねぎらうような詞は、若い頃よりも社会で揉まれまくった今聴いた方が泣きそうに沁みます。
>なにしろ体だけは 資本ですから
大事にしましょう
もうね、この歌のキモはここだと私は思うわけで。
何があっても、どんなに辛くても、元気でさえいたら、たいていのことは何とかなるもんだ・・・
ということも、この年(アラ還)だからこそ痛感してる(苦笑)
それを、20年以上前に表現している小倉さんが本当に凄い。
そしてもう1曲は【それじゃまた】とはまったく別の世界感の作品。
【気になる】
こちらの方は本当に些細な日常の中の「あるある」(ビデオの録画失敗した!とか気に入った服を買うのを迷っていたら先に買われた!という)エピソードを
カッコいいサウンドに乗せて歌っている曲。
小倉さんお得意の若者のリアルな世界でこれはこれで、凄く面白い。
彼女に見えている世界、そして表現の言葉の幅の広さに感動です。
そして・・・
アルバムとほぼ同じ頃にリリースされたシングルにも、小倉さんは関わっています。
1996年2月発売のシングルのカップリング。
【まったくもう】 (シングル「胸騒ぎを頼むよ」カップリング)
こちらの「胸騒ぎを頼むよ」は木村君が出演したCMのイメージソングで「男性が初めて女性化粧品(口紅)のCMに出た!」と世間で大きな話題になっていたので
実は私もそちらのインパクトの方が強くって、このカップリングについてはさほど注目していなかったんです。
そう、あの日までは・・・
あの日とは
1996年5月27日 「SMAPxSMAP」 森且行FINALが放送された日です。
森くんの脱退発表からこの日まで、私がどんな思いでいたのかはここでは省きます。
あの日から25年も経っているのにいまだにあの頃のことを振り返るのは胸の痛みを伴います。
この日6人で最後に歌ったメドレーは森くん自身が選曲したもの。
その中の1曲が【まったくもう】でした。
番組冒頭からずっとここまで号泣しながら見ていた当時の私だけど
この曲が流れ始めた時は一瞬涙引っ込む(爆)
「え、何の曲だっけ?」と(失礼)
だってこの日のメドレーのラインナップは
たぶんオーライ→$10→がんばりましょう→まったくもう→はだかの王様→Best Friend
というもので
森くん自らこの並びに入れるぐらい気に入ってる曲なのか・・・とその時初めてこの曲の凄さを知りました。
年上女性とのスリリングな恋愛の駆け引き模様を歌ったこの曲は、確かに当時のSMAP(危うい魅力を放つ青年達)にピタリとハマる世界観でもあった→ まったくもう ~Uta-Net
スマスマで歌われたのはサビの部分。
>きっと お姉さまは
いろいろ乗り越えてきてる
>ダサいのなんのと 逃げずに行っちゃえ
あぁ、この森くんの透き通るハイトーンヴォイス!
それまで感情がぐちゃぐちゃだったのに、この歌の時は涙も止まって引きこまれるように見入ってしまった私・・・
♪きっと お姉さまは~
の森くんソロパートは、これをもって私の中で「森且行史上最高歌唱フレーズ」に認定されました
(ちなみに2位「$10」 3位「がんばりましょう」 です←誰も聞いてない)
このパートを森くんソロで歌わせようと思ったのが一体誰だったのか(プロデューサーなのか、マネージメントなのか、作家さんなのか)知る由もありませんが
大正解!!!と、とりあえず叫んでおきたい←何様
悲しかったスマスマで、この曲の魅力を再確認できたことは不幸中の幸いで(苦笑)
森くんがSMAPを去ってから、寂しくなった時に何度この曲を聴いたことでしょう・・・
このサビを聴く度に「はー森くんにお姉さまって呼ばれたい・・・」と、痛い願望が爆裂していたいい年こいたおばちゃんです・・・キモくてすいません(変な中高年だという自覚はある←開き直り)
あ、それから・・・
その1であえて触れなかったのですが小倉さんはSMAPのデビューアルバム「001」にも1曲提供されていて
それが【Don't Cry Baby】なのですが
この曲も昔から人気が高くてシングルになってないのに
ベストアルバム「Cool」にも収録され、その後も2thベストアルバム「Wool」そして 4thベストアルバムの「pamS」(裏スマ)にも収録されているという、すごくファンに支持されている曲。
デビューアルバムに入っているぐらいですから、歌詞の内容はこの頃の彼らの「等身大」、幼き恋を歌ったものになっていますが →Don't Cry Baby ~Uta-Net
【まったくもう】と同じように、私にとって違う意味で特別な曲になったのは
やっぱり森くんのラストのスマスマからでした。
番組がいつものオープニングから始まった・・・
と思ったらそのすぐ後にこの森くんのアップ。
そして流れるナレーション。
「katsuyuki Mori FINAL」
~いよいよ今週で森くんが最後のスマスマ出演となります。
森くんの魅力を全てご覧にいれる特別企画~
次々と映る6人の顔・・・
この日、覚悟を決めてテレビの前に座った私だったけど
冒頭からいきなり6人の涙顔(しかも中居君があり得ないほど泣いている顔)が映し出されて
めちゃくちゃ動揺しました・・・
で
この数十秒の映像が映る間にBGMとして流れていたのが・・・
【Don't Cry Baby】 だったんですよね・・・
>DON'T CRY BABY 信じてなよ
変わらないものの輝き
DON'T CRY BABY 眩しいほど
海が青いから
と、明るく歌われるこの曲を、6人最後のスマスマのオープニングに持ってくるって・・・胸が詰まった
選曲は、一体誰がしたのかな・・・?と今でも思う。
泣かないで。
この別れは決して悲しいものじゃないんだよ、と私達に伝えたかったのかなぁ・・・と思うような【Don't Cry Baby】
涙をポロポロこぼしながら、この曲を聴いたあの日のあの瞬間を、私は一生忘れないと思う。
そんな特別な曲が、小倉さんの手がけた詞で本当によかったと思っています。
そして、SMAPが6人から5人になってすぐに発売されたのがアルバム「009 」
その中で、小倉さんは3曲を提供。
【シャンプー3つ】 (アルバム「009 」収録 読売テレビ「中居くん温泉」テーマソング)
【電話しようかな】 (アルバム「009 」収録 木村拓哉ソロ)
【あの夏の日】 (アルバム「009 」収録 稲垣吾郎ソロ)
【シャンプー3つ】はやはり若者の日常を切り取った作品で、ストレス解消法にシャンプーを気分で使い分けている、という発想が面白い(笑)
中居君の冠バラエティーの趣旨(お風呂屋さんの設定)に沿ったタイアップという面もあったのかもしれないですね。
木村君と吾郎ちゃんのソロ曲として発表された2つも、2人の個性をよく捉えた作品だなぁ~と感心してました。
木村君の【電話しようかな】は、熱が出た一人暮らしの青年が心細くって彼女に電話しようかな、と思う話。
吾郎ちゃんの【あの夏の日】は失恋ソングだけど、悲壮感はあんまりなくて、壮大な抒情詩のような世界。それがまたゴロちゃんに凄くマッチしていた気がします。
そして1996年の秋、5人になってから2作目のシングルリリースのカップリングもまた、小倉さんの作品でした。
【黙って俺について来い】 (シングル「shake」カップリング)
タイトルからもわかるように、かなり男っぽい歌(笑)
それまでは「女ってわかんねー」とぼやいたり、年上女性に振り回される青年を描くことでリアルを表現していたのが、逆にこういう強気に出ちゃう男の子を持ってきたことがまた新鮮でしたねぇ。
そして、SMAPへの楽曲提供が最後となったのが
1997年に発売されたアルバム01「ス」の中の1曲。つよぽんのソロ曲でした。
【愛がないと疲れる】 (アルバム011「ス」収録 草彅剛ソロ)
こちらの作品も、上手くいかない日常の中で愛する人の存在が救いとなっている、というささやかな幸せを歌った曲。
それがつよぽんのキャラクターと相まって、とても優しい曲になっているので大好きです。
この1997年の作品を最後に、以降小倉めぐみさんがSMAPの曲に詞を書くことはありませんでした。
彼らの成長と共にチームの音楽性や、目指すコンセプトが変わったということかもしれませんし
あまりにも巨大化していく「SMAP」に、等身大のリアルはもうそぐわなくなっていたのでしょうか。
その後のSMAPは、「世界に一つだけの花」とのめぐり逢いが象徴するように
身近な恋愛や日常の小さな悩みを歌うことよりも、もっと大きな意味の愛と平和をメッセージとして発信していくグループになっていきました。
それは「国民的」と呼ばれるに彼らに時代が求めた役割だったのかもしれませんが・・・
彼らが40代になり「シャレオツ」や「Mistake!」そして「華麗なる逆襲」を発表した時は
あぁ、SMAPはまた攻めに転じたのだな、と感じたものです。
40歳を超えて、円熟と渋みを増した大人の男性として、彼らはこれからどんな音楽を私達に聴かせてくれるのだろうか?
と、楽しみでなりませんでした。
そして、今の5人になら、小倉さんはどんな詞で、どんな世界観を与えてくれるのだろうか・・・?と想像していた時期もありました。
今
それがもう叶わなくなったことが本当に残念です。
だけど、あなたがSMAPに吹き込んでくれた時代の息吹は、きっと彼らの根っこになっていると思うのです。
大切な大切な、楽曲たちです。
いつの日か彼らが、あなたが作詞した愛すべき曲たちを再び歌う日が来ることを今は心から願ってやみません。
その時は、どうか空の上からSMAPを見守っていてくださいね。
長い長い追悼になってしまいました。
最後までお付き合いくださった皆さんに感謝です。
改めて
小倉めぐみさんのご冥福を祈って、この記事を終えたいと思います。
ありがとうございました。