作詞家小倉めぐみさんを偲んで。
つづきです。
アルバム「006~SEXY SIX」を発表し、従来のアイドル像から違うステージに踏み出した形のSMAPは、シングルリリースでもガンガンに攻め始めます。
【がんばりましょう】 (14枚目シングル。1994年9月9日リリース)
【たぶんオーライ】 (15枚目シングル。1994年12月21日リリース)
この2曲がわずか3か月の間に続けて発表されたという事実が改めて凄いな・・・と思う。
当時のSMAPの「飛ぶ鳥を落とす勢い」を如実に感じさせる2曲、とでも言うべきか。
この年(1994年)の3月に【Hey Heyおおきに毎度あり】でシングル12作目にしてやっとチャート1位を獲得したSMAP。
その後に出した【オリジナルスマイル】はCMソングに起用されたこともあって、ようやくお茶の間全般に彼らの歌声が浸透してきた、そのタイミングを見計らったように
バン!と出してきたのが【がんばりましょう】だったわけで・・・
いやぁ、もう。
この曲が出た時のインパクトは凄かった。
アルバム「006」から受け継がれているファンクな部分を取り入れつつサンプリングを駆使したサウンドに、まずびっくり。
「いよぉ~!」って掛け声(歌舞伎の声だそうで)から♪ダダダダダダ~って始まるイントロがめちゃくちゃ新鮮。
すげーカッコいい!!って思ったよ。
そして、その音楽に乗せる小倉さんの詞が、また秀逸!
個人的には「006」に収録されている「働く人々」と同じ世界観を感じる曲です。
>かっこいいゴールなんてさ
あッとゆーまにおしまい
星はひゅるっと消えていた
また別の朝だった
で始まる歌詞は、誰もが経験する人生模様(笑)
スペシャルな出来事ってそんなに長く続かない。すぐに終わってしまう。
それよりも平凡で退屈な日の方が圧倒的に多い。人生はそんな朝が毎日延々と訪れる・・・ということを、こういう言葉で示せるのってすごいね。
でもそれでも、生きていくのが人間だから。
>どんな時も くじけずにがんばりましょう
かっこわるい 朝だってがんばりましょう
日常生活に寄り添い、人生を励ます応援ソングになっているのが、すごく好き。
>東京タワーで昔
見かけたみやげ物に
はりついていた言葉は
「努力」と「根性」
っていうパートも唸ります。
このイケイケのカッコイイ音に「東京タワーのみやげ物」とか「努力」「根性」っていうある意味ローカルで泥臭いワードを、よくぞぶち込んだものです。
かえってめちゃくちゃ印象に残りますよね。
>仕事だから とりあえずがんばりましょう
空は青い 僕らはみんな生きている
いつの日にか 幸せを勝ちとりましょう
かっこわるい 毎日をがんばりましょう
改めてこの歌詞を読むと、この歌はまるで小倉さんが描いた「人間賛歌」のように思います。
前記事で取り上げた曲【それが痛みでも】では鋭い視点で社会を切り取ってメッセージを発していた小倉さんですが
この方は基本的に人間が好きで、人生を前向きに捉えたいというポリシーがあったのかなぁと想像しています。
そういうポジティブさに、SMAPという存在はピッタリだったんじゃないでしょうか。
たとえば
キラキラした王子様が高い所から「みんな頑張ってね~」と優雅にお手振りして、他人事のように励ましたって、人の心には届かない。
アイドルでありながら体当たりのコントやって、女装や被り物して、パイぶつけられたリ水に落ちたりしながら、必死でがむしゃらに物事に取り組んでいた当時のSMAPだからこそ、歌えた歌であり、響いたものがある歌。
彼らが
「仕事だからとりあえずがんばろう!かっこ悪くてもさ!」
と明るく歌うことのリアルさったら、ないよね。
そして
「頑張って」
じゃなくて「がんばりましょう」って
共に頑張ろうよという呼びかけのような言葉だから、ホントに励まされる。
その親近感が大いにウケたのか
この【がんばりましょう】はそれまで発売されたシングルの売り上げを大きく上回る記録を叩き出し、翌年の春の選抜高校野球の入場行進曲に選ばれるほどになります。
センバツの行進曲といえば、誰もが知る曲、大ヒット曲であることが前提だから
当時の私は「彼らもとうとうここに来たか!」と、感慨深かったなぁ。
そして、この曲にまつわるエピソードで、もう一つ忘れてはいけないのが
1995年1月20日に出演したミュージックステーションで
歌う予定の曲を変更してこの【がんばりましょう】を阪神・淡路大震災の被災者へのメッセージとして歌ったことですよね・・・
アイドルが、自らそういう社会的メッセージを発信することも珍しかったあの時代に
それを実行した彼らが本当に素晴らしい。
今でもSMAPの代表曲の1つとして必ず名前が挙がるこの【がんばりましょう】は
音の良さ、歌詞の親和性、そしてSMAPが国民に寄り添うグループであることを行動で示し始めた曲として、多くの人の心に残っているのだと思います。
余談ですが
先日CS放送で放映された映画「シュート!」を撮った大森監督が以前トークショーで語っておられたこと。
「映画を撮影した後(1993年の年末年始)の大阪のコンサートを招かれて観に行った。
会場は厚生年金会館の中ホール(キャパ少ない)なのに、客席が埋まっていなかった。だから親戚や友人知人、人数大勢連れて観に来てほしい、とスタッフから頼まれた。
でも、その1年後(1994年)の年末コンサートは会場がいきなりデカイ大阪城ホールになり、チケットは完売状態だった。1年でそんなに変わるのか!と彼らの勢いの凄さに驚いた」
という、いわゆる「ブレイク」した状況がこの2曲が立て続けに出た頃なんだと思います。
【たぶんオーライ】は、実は私の中で勝手に「6SMAPの完成形態」だと思っている曲で
曲もダンスも衣装も6人のビジュアルも、もう完璧!!文句なし!サイコー!!
と惚れ込んでいる曲なんです・・・
とある評論家がこの曲は「若者のリアルを平常心で体現しているソウルナンバー」だと評していたことがあって
いやーほんまや。まさにソレよ!!と、激しく同意したものです。
この曲もまず音が良い。
「006」からの流れで世界の一流ミュージシャンが演奏しているから。
めちゃくちゃグルーブなリズムとメロディが、も~大好きで。
なのに、歌詞はやっぱり「等身大」な日常で。
そのギャップがたまらなく好き!
でも、等身大と言ってもちょっと前に彼らが歌っていた作品と比べると、曲の中の主人公の年齢は確実に上がっているのが見て取れるのが面白い。
>余計な仕事おしつけられて
あんのじょうミスが山積み
>旅行とかなかなか行けなくて
彼女と今日もケンカで
だって いつも 忙しいんだからさぁ
少し前までは夏休みのときめきや、大学生のサークル仲間の恋みたいな内容の詞を歌っていた彼らが
この曲では「社会人」になってる(笑)
上司に仕事押し付けられる姿や
忙しくてフォローが出来なくて、彼女から愛想つかされかけてる様子・・・
そんな日常にぼやく青年の姿が歌詞から伝わってきます。
小倉さん、作品の中でちゃんとSMAPに年を取らせているのが素敵です(笑)
>GROOV'IN BABY たぶんオーライ
それでここまで来たんです
人生 たぶんオーライ
ジタバタしながらいきましょう Yeah
ここは【がんばりましょう】ほどポジティブじゃないけど
まあ、たぶん大丈夫だから、人生何とかやっていきましょう。
って、ゆるく自分を励ましてる感じがいいよね。
この力が抜けてる感じが、当時の若者気質にもマッチしてるというか(笑)
>GROOV'IN BABY 幸せは
小さくてもいいんです
きれいな 夕焼けだ
ほのぼのしながらいきましょう Yeah
>人生 されどオーライ
楽ありゃ苦もあるもんです Yeah ←この♪イェェェ~は森くんのソロ!ここ大好き!
大丈夫 たぶんオーライ
ジタバタしながらいきましょう Yeah
色々あるけど日常のちょっとした幸せを見つけてやっていこう、って歌ってる歌詞。
「あるよねぇ、そういうこと」と共感できる言葉が小倉さんが書く作品には本当に多くて、全部大好き。
そしてこの作品自体もですが
まあこの頃のSMAPさんの美しさと色気といったら・・・!
めちゃくちゃ凄かったよねぇ
私、このイントロで並んで歩いて中央に出てくる木村・森がすっごい好きで!
圧倒的な迫力とオーラがあると思いません?
この時木村君22歳、森くんはまだ20歳ですよ!
今同じ年齢のアイドルに、これほどの大人びた魅力を出せるコがいるだろうか?
(この独特な衣装を着こなせるのも、SMAPだけだと思うし)
自分の贔屓ばっか出して・・と言われないように、全員分の写真がこちら↓
いやー美しい・・・ひたすら美しい・・・
と、(当時)乳飲み子抱えた主婦でもハマる魅力的な6人でした
そしてこの人気沸騰中の1995年1月1日に、満を持して「SMAP初のベストアルバム」という謳い文句でリリースされたアルバムが「Cool」
ファン投票を基に選曲されたという話ですが、このアルバム、ベストと呼ぶにはちょっと変わっていて・・・
普通、ベストアルバムってそれまでの楽曲をそのまま入れるじゃないですか。
でも、このアルバムはほとんどの曲がアレンジを変えていたり、レコーディングし直されているんですよ(リテイクって言うのかな)
人気沸騰中の時期ですから、過去作品そのまま並べてもガンガン売れたと思うのに
わざと人気曲のアレンジ変えてくるって、SMAPの音楽チームってなかなかにチャレンジャーだなぁと思います。
アルバムに入っている曲の中でとりわけ森ファンに人気の高いのが「笑顔のゲンキ」で。
シングルの時はタイトル通り元気いっぱい明るく歌うSMAPさんだったけど、こちらのアルバムはガラリとアレンジを変えてミディアムテンポのしっとりした「笑顔のゲンキ」に生まれ変わっていて・・・しかも私の耳にはほぼ森くんの歌声しか聴こえてこないっていう(爆)
ほとんど森ソロ曲扱いの、素晴らしい楽曲です!(違)
あ、でもこの曲の作詞は森浩美さんなので、今回の話とは別になりますが失礼。
もう一つ、この「Cool」のアルバムが異色なのは、ベスト盤なのに新曲が入っているという点で。
それが、小倉さんが作詞した【過去の人】という作品。
これもねぇ、大好き!
曲調は【たぶんオーライ】や【働く人々】に近い感じのソウルっぽいナンバーだと思ってるんですが、歌詞がね・・・よくこんなの書いたなぁと思うわ。→過去の人 ~Uta-Net
彼女にフラれる男の子の話なんですけどね(苦笑)
リアルもリアル。
一応主人公は男の子で、彼の立場から思った言葉が綴られているんだけど
女性目線で「わかる、それな!」と頷きたくなるような内容になってない?笑
>すごく悩んだんだけどね
サヨナラにしたいのって
彼女が きっぱりとした瞳で切り出す
冒頭のここから、思わず苦笑い・・・
「すごく悩んだ」としおらしく言うわりに
「もう別れたい!」ときっぱり宣言するカノジョ(爆)
それいきなり言われた彼氏は戸惑うよねぇ(苦笑)
しかもそれだけじゃなくて
>楽しかったのはそう最初の yeah
3か月だけだったねって
かわいい顔してきついことつぶやく
じゃあそのあとの半年は
いったいなんだったの
つまり、このカップルは合計9か月ほど付き合っていたらしいのに・・・
そのうち「楽しかったのは最初の3か月だけなのよねー」
なんて冷めた口調で言われた日には、彼氏として立つ瀬ないし(苦笑)
「はぁ!?じゃ、あとの半年は!?」
ってなるよねぇwww
早く言えよ!
ってツッコミたくなるってもんですわ(爆)
おもろすぎるけど、女ってそういうとこあるよねーと、おばちゃんは思う(笑)
そして彼氏が恐怖に思っていることが2番の歌詞に綴られている・・・
>女友達が昔の彼の話をはじめると
やたらとキビしかったりするんだよね
彼女もこんなに冷たく yeah
どこかで言うのかもしれない
なんだか背中に寒い風吹いた
ケッサクです。
あるある過ぎて、わかり味が深い(爆)
女友達が酒の肴みたいに別れた彼氏をメタメタに言うのを(え?そこまで書いてない?爆)
聞きながら「俺もこのカノジョにそんな風に言われるのか・・・」と青ざめる様子まで浮かんできて面白過ぎるー!
>ほんとわかんないよ女なんてさ
なんで こうなるわけ?
とぼやく心境がリアルすぎるから、マジで(笑)
>そう 男のほうがずっと
心優しいもので
どうしてるか時々は
なんとなく思い出したりしてさ
これもよく言われる話ですよねぇ。
男の方はいつまでも別れた彼女を気にしてるけど、女は別れたらそこまで。「はい!次!」って気持ち切り替えるのが早いって(全員がそうだとは限りませんが。時と場合にもよるでしょうし)
でも
>男らしいのは女のほう
やけに潔くて
妙にたくましくて
と嘆く彼氏の気持ちはよーくわかる気がする・・・
>こっちはもう過去の人
と、カノジョの切り替えについていけずに「はぁ・・・」とため息ついてる男子の姿が目に浮かぶようです(笑)
思わず「ドンマイよー!」と、励ましたくなるような作品だわ。
【どうしても君がいい】で描かれた、若さにまかせてまっすぐに愛を求める男の子の姿もあれば
【過去の人】のように、彼女にフラれて「女ってわかんねー」と肩を落とすようなちょっと可哀想な男子の様子まで
小倉さんの描く「等身大」って、本当に幅が広くて感心します。
そしてそのどれもが、瑞々しい。
人気沸騰していたSMAPが素の自分を見せていたとは思わないけど
いかにも近くにいそうで、そしてちょっと(というにはレベルが高いけど)カッコイイ男の子、というアイドル像を本当に上手く作り上げていたなぁと感じるのは
この時期の小倉さんの関わった作品の力もすごく大きかったように思います。
SMAPの快進撃はこの後もまだまだ続きますが
段々森くんがグループから離れる時期の作品に近づいてくるので・・・
そこはね・・・振り返るのがちょっと辛いかも(苦笑)
でも、つづきます