*これは個人の妄想です。実在の人物とは何ら関係のない私自身の創作です。
ある日。
ラジオ番組の生放送を終えた吾郎が、店の扉を開ける。
シンと静まり返った客のいない店内。
ごく数人だけ、今日のために出勤しているスタッフからお疲れ様です、と声をかけられ軽くうなづく。
近づいてきたフロアマネージャーに「準備はもう整っております」と促されて、個室へ向かう。
「悪いね。本当なら休みの日に」
と吾郎が労いの言葉をかけると、いえいえ、と満面の笑みが返ってきた。
「この日のために吾郎さんが作られたお店じゃないですか・・・」
その言葉に微笑む吾郎。
「そうだ、部屋に行く前に…」
と、吾郎は先に厨房に向かい忙しく立ち働く調理スタッフの皆に「今日はよろしくお願いします」と頭を下げた。
一番近くにいたシェフが小さな声で「ウィ、ムッシュ」といたずらっぽく吾郎に返し、思わず笑ってしまう吾郎。
個室には、今日だけの特別なアレンジフラワー。
うん、いいね。
と呟きながら薔薇の向きを少し直す吾郎。
窓の外に広がる夕焼け。
夏の夕暮れ特有の薄暮が美しく、吾郎はしばし窓辺に佇み、変わりゆく空の色を眺めていた。
ほどなくして
失礼します。いらっしゃいました。
というマネージャーの声に振り返ると、剛、そして森がドアから入ってきた。
「いらっしゃい。ようこそ・・・あれ?2人、一緒に?」
「うん。ちょうどエレベーターで一緒になったから」
とニコニコの剛。
森は、壁にかけられた絵を眺めながら
「すげぇいいお店だね~ゴロちゃん」
と涼やかに微笑む。
「でしょ?あっ、森くん来るの初めてかぁ」
「うん。アベマの番組では見たけど」
「ななにー見てくれてるんだ」
「もちろん。ずっと見てるよ」
「あ、俺も森くんのレースチェックしてるよ~この前の伊勢崎?予選落ちだよね」
グサリと刺さるようなことを、無邪気に言う剛。
に、吾郎の方が慌てる。
「ちょっと、剛・・・」
「そ。準決にも上がれなくてさ・・・」
と苦笑いの森。
「夏場のレースはダメなんだよねぇ、俺。暑い時期は色々難しくって」
と肩をすくめる。
「そうなんだ?この前のって大きいレースだったんでしょ。森くん優勝したら今日それも一緒にお祝い出来るじゃん、って吾郎さんと話してたのに。ねぇ?」
どこまでも無邪気な剛。きっと久しぶりに森くんに会えたことが嬉しくてたまらないのだろう。
にしても、言うことがストレート過ぎる、と内心焦る吾郎。
いやまあ、と曖昧な笑顔で
「森くんの優勝のお祝いは、またその時に。いつでも席設けるから」
と声をかけると
森は
ゴロちゃん、気ぃ遣わないでいいよ。ありがとね。
とでも言うように優し気な笑顔を吾郎に向けた。
その後も3人でとりとめのないことを言い合っていたら、ドアの向こう側が騒がしくなった。
ほら、先に入りなよ。
わかってるっつーの。押すなよ、お前。
などというやりとりが聞こえたかと思うと、扉が開きキャップを目深にかぶり、黒縁眼鏡の中居が入ってきた。
一瞬3人を眺めたあと、すぐに視線を逸らし
「よ」
と軽く手を上げる。
「中居くーん!待ってたよぉ!」
嬉しそうに声を上げる剛。
そして中居の後ろから部屋に入ってきたのは、慎吾。
「2人も、エレベーターで一緒になった?」 さっきの剛と森くんみたいに。
と、吾郎が尋ねると
「家まで迎えに行ったんだよ」と言う慎吾。
へー、とちょっと驚く3人。
「だって、この人さぁ、今日の集まりのことさんざんゴネてたじゃん?そんなことしないと思うけど、万一ドタキャンされたら困るから、家まで行って連れてきた」
めんどくさい人だから。
とため息まじりに言う慎吾に、うるせー、と返す中居。
皆から一番遠い椅子に座り、足を組んでズボンのポケットに手を突っ込む。
「だいたい、何で今集まるんだよ・・・意味わかんねー」
「そりゃ中居君の誕生日だからでしょう!」
剛が即座に答える。
「それと社長就任のお祝いも兼ねて、ね」
と言いながら、食前酒を中居の前に置く吾郎。
「バカにしてんのか?」
睨む中居。
「とんでもない。あ、この個室、商談にも最適ですからぜひこれからご贔屓に。社・長」
社長、に込められたニュアンスに
「んだよ、やっぱバカにしてんだろ」とつっかかる中居を、可笑しそうに見る吾郎。
その様子を見てニヤニヤしている森、剛、慎吾。
「ビジネスなら、今日は店を休みにしないで開けろっつーの。俺らの誕生日って、あれだろ?ファンの子で集まって飯食うとか?そういう予約が入るから、書き入れ時なんじゃねーのか?」
とぶっきらぼうに言う中居。
「おぉ、詳しい・・・」
「そういうこと知ってるんだ、中居君。意外だね~」
と、やっぱり面白がる3人を無視して続ける中居。
「・・・それでなくても、コロナで色々厳しいんじゃねーのか?店」
チラリと吾郎を見上げる中居。
「心配してくれてるの?ありがとう」
吾郎が穏やかに微笑む。
「でも大丈夫。何とかやっていけてるから」
「そうそう、せっかくみんなが中居君の誕生日お祝いしようって言ってるんだから、ここは素直に喜んでよ!」
ずっとハイテンションな剛をめんどくさそうに見る中居。
「おめーはホント変わんねーな・・・」
と言いつつ、ちょっと口元がほころぶ中居。
「あっ!そういえばこの前の金スマ見たよ!また俺のメールのことネタにしてたでしょ!返事が【おぃっすー】だけだったって」
「見てんじゃねーよ・・・ヒマ人か」
「ひどいよ~!俺、そんな簡単に返してないじゃん。話、勝手に盛らないでよ」
と頬を膨らます剛。
「あ、でもすだっちとのトークは面白かった!・・・俺もまた、すだっちとロケしたいなぁ」
何か言い返そうとしたら、1人で話題を転換した剛に思わず苦笑いする中居。
「つよぽん!落ち着け!!」
たまらず慎吾が剛の肩を押さえて椅子に座らせる。
「1人でテンション上げすぎ!まだ食事も始まってないのに」
「食事なぁ・・・」
と呟く中居。
「そもそも俺、こういうこじゃれた店、得意じゃねーし。定食とかでいいんだって・・・豚の生姜焼きとかさ・・・」
「生姜焼き!あるよ!!」
と、剛と慎吾が声を揃えたので、一瞬中居がビクッとなる。
「ちゃんと、あるんだよ。どろ豚の生姜焼きっていうメニューが」
嬉しそうに言う慎吾。
え、となる中居。
「当ビストロは、お客様のお好みに合わせた料理をサービスするのがモットーですから・・・中居君のお好きな物はちゃんとご用意しておりますよ」
と、吾郎が慇懃に一礼してみせ
「なんてね」
と笑う。
「僕らがビストロで作ってたメニューを基にして、季節ごとにメニューを変えてるんだけど、どろ豚の生姜焼きは人気あるよ」
「・・・そうか」
「あとね、エビパン!」
「エビパン・・・って、昔、森が作ったあれか?」
「そう!」
と、また嬉しそうに声を揃える剛と慎吾。
「厳密には、うちのは森くんのレシピとはちょっと違うんだけどね。森くんが最後のビストロで作ったメニューだし・・・定番で入れてる。大人気だよ、エビパン。中には感激のあまり泣きながら食べてる人もいるから」
吾郎の説明に、今度は森が照れて笑う。
「みんなが揃ったらお料理出すから、メニュー見ながらもう少し待ってて。今日はゆっくり楽しんでいってよ」
アペリティフのおかわりはどう?
と、吾郎が皆のグラスに目をやり、スタッフに指示を出す。
その傍らで、慎吾がチラリと時計を見る。
「みんな・・・なんだよね?今日」
慎吾の不安気な声に、中居をはじめ4人の表情が一瞬曇る。
「・・・吾郎さん、連絡したんだよね?」
「うん・・・電話とLINEで確認してる」
慎吾の表情を横目で見ながら小声でやりとりする吾郎と剛。
いつも時間をきちんと守り、人を待たせることをしない男が、一番遅れている・・・
それだけで、部屋の空気が不穏になる。
中居は無言で窓の外に目をやり、慎吾はそんな中居を心配そうに見ている。
空気を変えようと、吾郎が
「じゃあ・・・とりあえず先に」
始めますか?
と言いかけたその瞬間
ガチャリとドアが開いた。
5人が一斉にそちらを見ると、サングラスをかけた木村拓哉がゆっくりと部屋に入ってくるところだった。
思わず木村を凝視する5人。あまりにもじっと見られてバツが悪いのか木村は、サングラスを外しながら
「・・・悪ぃ。遅れた」
と、ボソッと言う。
とたんに部屋の空気が緩む。
嬉しそうに目を輝かせる剛。
静かに微笑む森。
安堵のため息が出る吾郎。
感極まった表情の慎吾。
そして中居は、一言。
「・・・ま、木村は昔から遅刻キャラだしな」
中居の言う【遅刻キャラ】とは、その昔(1998年)彼らの番組の『決められたリハーサルの時間に遅れてきた者は、今後遅刻キャラとして生きていく』という企画のことで、その時に限って大遅刻をした木村のことを指している(*香取慎吾も、同じく)
「中居君、そんな昔のこと・・・」
今、言わなくても。と慌てる吾郎。
「すっげー昔の話なのに、よく覚えるよねぇ・・・」
と感心しきりの慎吾。
「え?何が?何の話?」
と吾郎と慎吾の顔を交互に見る、天然な剛。
黙って皆の様子を見つめる森。
しばしの沈黙・・・のあとで
「うるせー。お前に言われたくない」
と、中居に言い返す木村。
その瞬間ニヤリと笑う中居。
今
中居が心から喜んでいることが5人に伝わる。
これだよ・・・これ。
と、心の中で呟く慎吾。
長い間求めていたのはこんな風に流れる空気。6人を包む懐かしい感覚。慣れ親しんだ時間。
それらを今再び感じて、自然と6人が笑顔になる。
「あー、これ先に渡しとくわ」
わざと素っ気なく、木村がテーブルの上にドン、と紙包みを置いた。
「何だよ?」
「ハッピーバースデー、ヒロちゃん。ってことだろ?今日」
「ヒロちゃん、言うな」
「お前もう何でも持ってるだろうから、ソレにしといた」
中居が包装紙を開くと、中身は・・・いいちこだった。
「今も毎日飲んでるだろうと思って」
「えーっ!!木村君、マジで!?」と声を上げたのは、剛。
「なんだよ、大声で」
「だって、俺もいいちこ、買ってきちゃったよ!」
と、剛が紙袋から出した、いいちこ。
木村の物とはちょっと違うバージョン。
うわぁ・・・と天を仰ぐ森。
「まさか、森くんも・・・?」
「うん。やっちゃった」
と苦笑いしながら、箱を開ける森。
こちらも、いいちこ。またまた違うバージョン。
「なんなんだよ、おめーら。どいつもこいつも、おんなじ酒ばっか持ってきやがって・・・」
「いや、同じじゃないっしょ。全部違うよ?こんなに色々あるんだねぇ、いいちこって」
「感心すんな」
3つのいいちこの箱が並んだテーブル。それを前にしてちょこん、と座る中居。
「・・・こうなったらアレだな。おしぼりもらって、ベストフレンド歌うしかねーな」
腕組みしながら木村が言う。
「ちょっと、うちそういう店じゃないんだけどな。だいたい、今日のために僕が選んだとっておきのワインがあるんだから、飲むならそっちでしょう」
吾郎が口を尖らせる。
「お、いいねぇ。一応確認しとくけど、今日ココ、お前の奢り?」
「あ、うん。もちろん・・・それが僕からの中居君への誕生日プレゼント、のつもり」
ヒュウ~っと木村が口笛を吹く。
「カッコいいことしてんじゃねーよ」
ドン、と吾郎の胸を叩く木村。
「慎吾、さっきから何やってんの?」
剛の声で皆が窓の方を振り向くと、慎吾が少し離れた場所からスケッチブックに一心不乱にペンを走らせていた。
「・・・絵、描いてる」
「ええ?今かよ」
だって、と顔を上げた慎吾。
「やっっっと、6人揃ったんだよ。今みんなを描かないでいつ描くの!」
慎吾の瞳が、これ以上ないほど輝いているのは嬉しさからなのか、それとも涙で潤んでいるからなのか・・・
ただ、わかるのはその笑顔が、少年の頃と変わっていないことだけ。
ずっとずっと昔の、あどけない小学生の慎吾の顔だと5人は思った。
「ちゃんと描いて、色も塗って、それを中居君にプレゼントするから。待ってて」
慎吾の言葉に、鼻の奥がツンとする中居。
ばか。泣かすんじゃねーよ、と心で呟く。
さあ、とりあえず乾杯しよう。
吾郎の合図でシャンパンの栓が抜かれて
6つのシャンパングラスが、綺麗な音を立てて合わさった。
中居君、ハッピーバースデー!!
48歳かぁ~ もうジジイだねぇ。
うるせーこの野郎。
最近、白髪多くない?テレビ見てたらわかる時あるよ。
マジか!
あと、髪の毛も、ちょいキテるよね。
人のこと言えるのか?お前もだろ!
もういい年なんだから、ちゃんと人間ドックとか行きなよ。
俺だけじゃねーだろ!俺ら全員40半ばのおっさんだぞ!みんな同じだっつーの!!
etc.etc・・・
その夜のBISTORO J_Oからはいつまでも笑い声が聞こえていました、とさ。
END。
【あとがき】
中居君のお誕生日は過ぎてしまいましたが・・・はい。こんな妄想(&暴走)小説に最後までお付き合いくださった方、どうもありがとうございます。
ほんのシャレで書きましたので、どうか怒らないでね。
だって
ビストロジョーさんが「8月18日はお店を休みます」とアナウンスされた時から
頭の中で「Let's have a Party!」の妄想が広がりまくり・・・書かずにはいられなかった。
実際のところ、このコロナ禍でパーティーなどリスクが高すぎるので(苦笑)
18日のお休みはきっと、たまたま、中居君の誕生日と重なっただけなんだろうなぁと推察していますが
妄想は、自由です。
こういうことが、あったら楽しいだろうなぁ・・・
いつか、本当にこういうことがあればいいなぁ・・・
という願いを込めて遊ばせていただきました。
冒頭にも書きましたが、これは全てフィクションです。
「うちの推しはあんなこと言わない」とか、そういうクレームご勘弁くださいませね。
あくまで、私が個人的趣味と偏見・偏愛で書いたものですので・・・
あ
中に1つだけ、本当のことは入れた(笑)
ビストロで、エビパン食べて感極まって泣いた人は、私です(爆)すいません。
改めまして、中居君のお誕生日に愛を込めて
ヲタクに妄想ネタを与えてくれたビストロジョーさんにも、感謝です。
そして
いつの日か本当に
6人がまた並んで笑いながら話が出来る日を、心の底から待っています。
以上、お目汚し失礼しました!