「うん」
吾郎が涼しい顔でうなづいた。
 
やっちまった・・・と中居はとてつもない自己嫌悪と羞恥に陥った。
若い時はたまにあったが、最近は記憶を失くすほど飲むことなんてなかったのに。
二日酔いの頭で自分の酔っぱらった行動を聞く時ほど、二重の意味で気分の悪いことはない。
はぁ~っと、中居は大きなため息をついた。
「ったく・・・俺そんなに飲んだかなぁ・・・」
「中居君さぁ、やっぱり疲れが溜まってるんだよ」
吾郎がキッチンに戻りながら言う。
「んなことねぇよ・・・」
「いやぁ、誰が見ても無茶してると思うよ。今、こういう時だから頑張らないと、って思う気持ちはわかるけどさ、もう少し体のことも考えないと」
まさかここで吾郎に説教されるとは、と中居は憮然とした。
「中居君ってさ、弱ってる時は木村君にひっつくから、すぐわかる」
「はあ?何言ってんだ。バカ、そんなことねーよ!」
吾郎の言葉に、うろたえる中居。
「いやいや。絶対そうだって・・・自分じゃ無意識かもしれないけどね」
対面キッチンの向こうから、吾郎がなんだか嬉しそうに笑っている。
 
「で・・・なんでオレはお前んちに泊まってるんだ?」
中居の疑問は、またそこで最初の話に戻る。
「だって、中居君酔いつぶれて寝ちゃったから」
酔ってさんざん騒いだ挙句、中居はそのまま店のソファで眠ってしまったというのだ。
「・・・・・」
「そしたらもう、誰かが連れて帰るしかないよね」
「・・・いや、だからってここじゃなくて、タクシーで俺んちまで送ってくれたらそれでよかったのに」
「ちょっとあの状態じゃあ1人で帰すの心配だ、って話になったんだよね。特に森くんがね、心配してたから。自分のお祝いでこんなに酔わせて・・・って」
祝うはずの相手に、逆に心配をかけてしまった。それを聞いて中居は落ち込む。
「剛も潰れちゃったからね、あっちは慎吾が担当した。森くんは次のレースで今日から浜松に行くって言ってたし、木村君は撮影で、朝早くからロケみたいだし。そしたら、もう僕しかいないじゃない」
「・・・そうか」
もう反論する気力もなくなり、中居は素直にうなづいた。
「まあ、たまにはこういうことがあってもいいんじゃない?」
吾郎が微笑む。
「こんなことでもなかったら、中居君は一生僕の家に泊まることなんてないもんねぇ?」
吾郎があまりにも自然体でそんなことを言うので、中居はそこで初めて、ああ、吾郎にも迷惑をかけてしまったんだ、という思いに至った。
「・・・悪かったな」
ぶっきらぼうに言う中居に、ニッコリ笑う吾郎。
「全然そんなことないよ」
 
 
 
 
つづく。。。
 
image