翌朝。
空にはまだ雲があるが、雨はすっきりと上がっている。
顔を洗い、こんなところでも僕はラジオ体操をする。
カメのエサやりが完了したと、仲間から報告が入る。
ありがたい。

素敵な朝食が用意されていた。

コーヒーをいただきながら一仕事して、10:00に出発。

大きな荷物は宿に預かってもらい、自転車をお借りした。
電動アシスト自転車初体験である。

すごい力強さだ。
思わず笑ってしまう。
坂道でも楽々発進できる。

「唐櫃の清水」というのがあった。

『水質調査官』としては飲まないわけにはいかない。

うまい。

雑味がなくすいすいと胃の腑に落ちてゆく。

そんで、この下に畑が広がっている、というのが素晴らしい。

みずで、みどりが、いきている。

豊島美術館に到着して、昨日の美女と再会した。
念の為言っておくが、一緒に来たわけではない。

美女に頼まれて美女の写真を撮った。
せっかくなので美女にも僕の写真を撮ってもらった。

美女と違って僕では絵にならない。

遊歩道に、人生みたいな樹があった。

こんな極端な二択を迫られることなどそうそうないだろうが。

またしてもまったく趣旨を知らずに来たのだけれど、豊島美術館とは一個の巨大な美術品であった。
上から見た時には、あの白いドームの中でどんな展示が……と思っていたが、これ全体が一つの作品なのであった。
これ一つに美女は今日一日入り浸るという。
率直に言って、決して大袈裟ではないと思った。
ころころと動く水滴、風と青空、時おり響き渡る子供の咳。
悟りが開けそうである。
美女、おもむろに帳面を取り出し、水滴のスケッチを始める。
僕は（多分）30分ほど『水質調査官』のプロットを全力で考えて、ドームをあとにした。

併設のカフェでホットレモネードと米粉ドーナツを注文する。

そして、おもむろにパソコンを取り出し、書き物の仕事を始める。
売れっ子なのではない、〆切管理が甘かったに過ぎない。
どうにか記事を納品してカフェを出ると、美女もちょうどドームから一休みしに出てきたところであった。
美女に別れを告げ、僕は東へ向かった。

念の為言っておくが、美女エピソードはこれでおしまいである。
僕は寅さんではない。

つづく。

豊島・直島旅行記 その3

豊島・直島旅行記その3