旧ラテン語で「赤」といえば「ルビウス」…ルビーの語源ですが、その宝石ルビーを赤くする微量の金属元素であるクロム(Cr)は、その他にルビーの色に影響する金属元素バナジウム(V)、鉄(Fe)と比べてもその存在自体がとても少ない。海の中ではバナジウムの1/10ぐらい、地殻では鉄の1/250ぐらいしか存在していません。平均してクロムが含まれる地質でルビーが生まれるなら、世界中のコランダム(ルビーの鉱物名)の鉱床でルビーが産出するはずなのに…実際は、ミャンマーやタジキスタンなどの一部の極々限られた地域でしか産出しない…なぜルビーを赤くするほどの密度で、しっかりと存在しているのか?諸説はありますが、有力なのは、サンゴや微生物が持つクロムが、海底に堆積し、その堆積岩が2億年とも4億年とも言われる地殻の移動により現在の位置に圧縮されたからだというモノです。ルビーが育つ母岩である大理石の主成分も、ルビーを赤くする着色成分も両方、太古に生きた「生命」が供給源になっているということです。古くからルビーの宝石言葉に「生命」というものがありますが、人の感性がそれを感じていたとしたら驚きです。
また、このクロム…古くはギリシャで「色」を表しました。そうColor(カラー)=色の語源です。このクロムは、エメラルドを緑色にする着色要因でもあります。色々と活躍するカラフルな元素なのです。

写真は、糖蜜状組織…ルビーの中に水と蜜を混ぜたような模様ですが、これはクロムの含有率のムラによるものです。だから、クロムがほとんど入らないブルーサファイアには見られないインクルージョンです。