
指輪88(淡交社)より引用ここから…
ルビーの赤が印象的な指輪です。全体に
黒のエナメルが施されていたと思われ、
作られたときには、さぞ絢爛豪華だった
ことでしょう。このような手の込んだ装飾
は、宝石研磨や彫金の技術が高度化し、
さらにエナメルの登場により表現が豊かに
なった後期ルネッサンスの特徴です。
ルネッサンスに入ると、約束、忠誠心、愛
するパートナーを想う気持ちなどを表現
するようになりました。また、この時期に
金細工師が社会的地位を得るようになり、
職人同士がその技を競い合うことによって、
加工技術が飛躍的に進化しました。
そういった環境も、この時期の装飾が豊か
になった背景の一つです。
この指輪のルビーは、ビルマ(現ミャンマー)
産です。これより前の指輪にもビルマ産の
特徴を示すルビーが使われていますが、
1510年前後にビルマを訪れているポルトガル
人デュアルテ.バルボサ(1480頃ー1512)
が、現地で貨幣のように取引されているルビー
について記述を残しいることから、ビルマ産
ルビーの価値がヨーロッパに伝わったのは、
ちょうどこのリングが作られた時期だと考え
られます。ルビーはルネッサンス開化ととも
に広がり、高級な宝石として認められるように
なりました。
(引用ここまで)
このリングを手に取った時の第一印象は、
作った職人さんが、技の出し惜しみを
せずに、持てる技術のすべてを出し切って
作ったよう感じました。
原稿も担当させていただいたのですが、
ちょうどこの頃に世界一周の旅をしていた
マゼランと共に世界を周ったバルボサが
ビルマ産のルビーは、貨幣のように流通
していると伝えています。
このリングのルビーは、ミャンマー産
の無処理で美しいものですが、カルシウム
の結晶と思われる「アパタイト」が写真の
ルビーのテーブル面に確認できます。
この形のアパタイトは、ミャンマー中部の
ルビー鉱山、モゴック産の特徴です。
何百年たっても変わらない美しさを
発揮しているモゴック鉱山産のルビーを
誇らしく感じました。
