こんな時間に響くサイレン。
千鳥足の俺の先には人だかり。
どうやらマンションの地下で火があがったらしく、
大音量で警報がなっている。
何台もの消防車と救急車。
建物から煙はあがっておらず、
住民は避難したようだ。
通り掛かっただけなので詳しくはわからないが、
見た感じでは煙も出ていないので
とにかくケガ人がでないことだけを祈るのみだ。
そして、もうひとつ。
聞こえてきたのは
「今はそんな場合じゃないでしょ!」という女性の怒声。
そのマンションの入口に座っていた男女だ。
あくまで想像だが、
どうやら男は彼女に気があるらしく、
一緒にいるところをみると2人で部屋にいたらしい。
しかし彼女は言う。
「今日はもう帰って」
このマンションは彼女の家のようだ。
僕はその後、聞きとれないほどの、彼が口にした言葉を忘れない。
「…こんなはずじゃ…」
二人に何があったのか知らない。
しかし人生なんて熱したフライパンに落としたバターのように、
ほんの一瞬で焦げてしまう。
こんな飲むはずじゃなかった。
そんな言葉をぐっと飲み込んで、俺はサイレンをあとにした。
