アルコール専門病院に7回目の入院していた人が、2泊3日で外泊することになった。


 いつもの学習会で、満腹では飲酒欲求は減る、空腹になると飲みたくなる、だから腹を減らすなということを繰り返し学んでいた。


 これは酒をやめ続けるための知恵のひとつであるが、この人は飲むために応用しようとした。


 満腹にすれば飲みたくなくなる。


 外泊初日の夕食に、うまい酒を1合だけ飲もう。その後にすぐ飯を食って満腹にすれば、1合だけで止まるだろう。


 2日目に十分酒を切って、その翌日に病院に帰るわけだから、飲酒はばれないだろうと考えた。


 ところが、3日目に帰院したときには、かなり酔っており、衣服は泥だらけになっていた。


 途中で田んぼに落ちたという。


 どうしてこうなったかと聞いてみた。


 計画通りだったのは、夕食時に1合飲むところまでだった。


 飲んでしまうと、次の酒がほしくなり、ご飯を食べることはすっかり忘れてしまった。


 それからは、いつものような飲み続けである。


 予定通り病院に帰ってこれただけましというものである。


 この方は、何とか上手に飲める方法はないものかと、あれこれ探していた。


 それはいつも失敗に終わり、そのために何度も入院を繰り返していたのである。


 今回の思いつきもその一つであった。


 アルコールをコントロールして飲むことができなくなった人は、自分は上手な飲み方はできないこと、断酒するしかないことを認めることである。


 上手に飲む能力がないのに、それをやろうとしても無理というものである。


 何度やってもうまくいかないときは、あきらめればよい。


 アルコールはやめるしかないと認めればよい。


 しかし、不可能なことに何度も何度も挑戦をしてあきらめることなく、死に至る人も多いのである。