颯爽と歩く美人。
高級車に乗り込む金持ち。
あるいはその両方を併せ持つもの。
街中を歩いていると自分よりハイスペックな人たちばかりで嫌になる。ショーウィンドウに映った自分がひどくみすぼらしい。肩を丸めて足早に帰宅する。一日中誰かにみられていたかのような気がしてどっと疲れた。
明日は幼馴染の友達と会う予定だ。今日は早めに寝よう。
「こっちだよー」
手を降る見知らぬ女。久しぶりに会った幼馴染は様変わりしていた。目を見張るほどの垢抜けだ。
「みてみて。最近できた彼氏」
仲睦まじい二人の写真を見せてくる。
「えー、かっこいいじゃん。羨ましい」
「でしょ、でしょ」
友人の幸せを喜ぶ言葉とは裏腹に殺意が湧いてくる。
いつのまにこれほどの差が開いたのか。昔は自分の引き立て役だったのに。
絶対にこいつより幸せにならなければならない、と彼女は心に誓った。
数か月後、彼女は完璧な変貌を遂げていた。街行く人々は彼女の美貌に釘付けになり、自然と道が空けられる。周囲の態度の移ろいに大いに満足していた。
「あら、失礼しちゃうわね」
ぶつかりそうになった芋女など最早自分が歯牙にかける存在ではない。彼女は芋女が道を空けるのを待った。しかしそのとき彼女は気づいたのである。軽く頭を下げて通りすぎようとする芋女の目に憎悪の光があったことに。それはかつて彼女自身が持っていたものであり、芋女の気持ちは痛いほどよくわかった。
とたんに彼女は街行く人々に向けられている視線がすべて憧れによるものではなく、嫉妬によるものだと錯覚した。昔の自分が他者に抱いていた憎悪の念が何倍にもなって返ってきたのだ。彼女は恐怖におののき、逃げるように家路を急いだ。