神集島ーかじわしま
博多の西、唐津と呼子の中間の玄海に、ぽっちり浮かんだ、周囲1里11j町の小さな島である。その島の名に魅せられて、その昔友を誘って唐津から島に渡った。50年も昔のことである。樹木が少なく、ただ広い芝生が広がっていた。店のあった記憶もない。唐津で買ったおにぎり弁当で一杯飲み、青空の下で寝そべった記憶がある。
しかし変わった名前の島である。五世紀神功皇后の新羅征伐の折に、神々もこの島に集まったという。しかし吉田東吾の『地名辞書』に
よると、もと柏島と呼ばれていたという。また新羅人が漂流して来たのか狛島とも呼ばれていた。
天平時代、遺新羅使の船もこの島で風待ちをしている。その時の萬葉集の歌。
足日女ーたらしひめーみ舟泊てけむ松浦の海 妹が待つべき月は経につつ 10-3685
島の帰りに呼子にある生簀の烏賊ソーメンの有名な店に立ち寄った。烏賊の身は薄く、さほど美味しいとは思わなかった。何年か後に函館に行った時の烏賊ソーメンは抜群に美味しかった。東シナ海で生まれた烏賊は、玄海から日本海に出て、冬の函館辺りで一人前に成長するのであろう。函館の冬の烏賊の生け作りは天下一品である。